Elvin Jones / Puttin' It Together

昔からよく知っていたエルビンのピアノレストリオのアルバム。中野北口にあったジャズ喫茶『ビアズレー』で聴いた記憶がある。しかし、かつては毎週末のように通っていた新宿や渋谷のディスクユニオンで、中古LPに出会うことがなかったため、手に入れる機会を逸してしまっていた。最近になって、Amazonで新品CDをようやく発見することがきた。国内盤ではあるが、Billy Taylorによる原文ライナーノーツを掲載していて、こう始まる。

This is a most unusual trio. Each man is not only a strong, imaginative, sensitive musician, he is an adventurer. He has to be because there are no well charted courses for this kind of playing.(これは非常に特異なトリオだ。メンバーは、力強く、想像力に富み、繊細な音楽家であるだけでなく、冒険家でもある。指標のない楽器構成のため、大胆な試みを必要としたのだ。)

確かにその通りで、エルビンが描いたピアノレスの構想に、フロントのジョー・ファレル、ベースのジミー・ギャリソンが見事に応えている。どれだけの冒険ができるかを、ギャリソンはベース奏法に工夫を凝らし、ファレルはテナー・ソプラノ・フルート・ピッコロを曲毎に持ち替えて臨んでいる。ジャケットのデザインにも表れているように、Puttin' It Together(それぞれの冒険を1つにまとめ上げよう)なのである。

1. Reza
2. Sweet Little Maia
3. Keiko's Birthday March
4. Village Greene
5. Jay-Ree
6. For Heaven's Sake
7. Ginger Bread Boy

Joe Farrell - tenor saxophone (tracks 1,4,5,7), soprano saxophone (track 2), alto flute (track 6), piccolo (track 3)
Elvin Jones - drums
Jimmy Garrison - bass

Recorded on April 8, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Earl Hines / Here Comes

アール・ハインズの名前は昔から知っていたものの、彼のアルバムは所有していなかった。では、サイドマンとしての所有アルバムはと言うと、ライ・クーダーの2枚のアルバムParadise And Lunch(1974年リリース)とJazz(78年リリース)のみ。久しぶりにParadise And Lunchを聴いて、ハインズのリーダーアルバムが聴きたくなった。そこで、ハインズのWikipediaで調べたところ、100枚ほどあることが判明。次に、Amazonで入手可能なアルバムを検索。リチャード・デイビスとエルビン・ジョーンズによるピアノトリオの本作を見つけた。程度の良い中古で580円(送料別)。

ジャズピアノの父と呼ばれるハインズのピアノだけでなく、コルトレーングループ脱退後のエルビンがピアノトリオでどんなドラムを叩くのかに興味があった。エルビンは決して前に出過ぎることなくハインズをしっかり支えている。そして、デイビスがピアノを引き立てようと見事なウォーキングベースで絡みつく。良質で温かみのあるピアノトリオのアルバムである。

ジャケットは録音終了後のスナップショットだろう。ハインズとデイビスの表情から、ご機嫌なセッションだったことが分かる。残念なのは、エルビンがドラムセットの片づけで下を向いていること。そして、アルバム全体が30分余りで終了してしまうこと。

1. Save It, Pretty Mama
2. Bye Bye Baby
3. Smoke Rings
4. Shoe Shine Boy
5. The Stanley Steamer
6. Bernie's Tune
7. Dream Of You

Earl Hines - piano
Richard Davis - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on January 17, 1966 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

シモコフ & テッパーマン 間章訳 / エリック・ドルフィー

1975年6月29日発行 晶文社 定価1960円。この本は、そのものずばり『エリック・ドルフィー』と題されたドルフィーの研究書である。だがしかし、清水俊彦氏と訳者の間章氏が、それぞれのエッセイを加えたことで、ドルフィーという人間像が浮かび上がっている。発行から46年の間に、新たなドルフィーの音源はほとんど発掘されなかった。それは、あまりにも凝縮された彼の演奏家としての人生だったからだろう。間章氏は、本書の中でさりげなくこう語っている。

「彼こそは本来的に即興演奏でしかない、根拠をあらかじめうばわれた音楽であるジャズを演奏家として演奏し続けるという二律背反において、見事に生きてみせた一人の演奏家なのである」。そして、以下に本書に記されたドルフィーの語録のようなものを抜粋した。

「私は自分の演奏を、調性にのっていると考えています。たしかに私は、与えられた調にある通常の音とはいえない音で演奏します。しかし私にとっては、これらの音は正しい音として聞こえるのです。私は自分が、発想のおもむくまま勝手に変えているとは決して思ってはいません。私にとっては、私の吹くひとつひとつの音は、曲のコードに関連しているのです」。

「私にとってジャズは、生活の一部のようなものなのです、それはふだん道を歩きながら、人が見たり聞いたりするものに対する反応や私の印象といっても良いくらい私には自然なものです。私はそういった反応のすべてを、私の音楽を通して、ストレートに表現することができると思っています」。

「楽器で演奏する人間は、私が演奏に対して持てたのと同じくらいの暖かい人間性と人間的な感情でもって、演奏に接するよう努めなければならないと思います。私は、私が今まで通常の方法で話すことができたのより以上のものを、楽器を通して演奏することによって表現したいのです」。

「あまりにも多くの知るべきことがあり、そして、試み、発見しなければならないことがあるのです。私は、私が今までなしとげたものすべての彼方にある〈なにか〉を、いつも聞き続けています。私には、自分が得ようと努めなければならない〈なにか〉がいつもいつもあるのです。私が音楽で成長すればする程、私の聞ける新しいものの可能性も増大するのです。まるで以前にはその存在を想像もしなかったサウンドを、私はあくことなく求め続けるようにしていつも生きています」。