Charles Lloyd / The Water Is Wide

チャールス・ロイドが60歳を過ぎてからの演奏。完全に肩の力が抜けている。無理に自分を主張することなく、内に秘めたる気持ちをサックスという楽器を通して純粋に表現。その姿勢に、まわりのミュージシャンも同調。演奏が進むにつれ、どんどん熱くなり自己表現へ走る。ジャズにおいては、それは自然であり、その過程が共感を呼ぶことになる。だが、このアルバムは、熱くなっていかない。周囲を包み込むような大河の流れ。

タイトル曲The Water Is Wideは、スコットランドで16世紀頃から伝えられているバラッド。この曲に魅せられたのはロイドだけはでない。1975年11月21日、ディランはボストン・ミュージック・ホールでジョーン・バエズとデュオで、この曲を歌った。ライブアルバムThe Rolling Thunder Revueに収録。2002年11月リリースなので、本作録音の3年後。ロイドはディランに触発された訳ではないようだ。まさか、ロイドがディランのライブに足を運んだとも思えない。以下はCD帯のキャッチコピー。

「百戦錬磨のサックス奏者チャールス・ロイドが初めて手がけたセルフ・プロデュースによるECM作品。ついに実現した若き鬼才ピアニスト、ブラッド・メルドーとの共演が、果てしない音世界を紡ぎ出す。スイングジャーナル選定ゴールド・ディスク」。

1. Georgia
2. The Water Is Wide
3. Black Butterfly
4. Ballade And Allegro
5. Figure In Blue
6. Lotus Blossom
7. The Monk And The Mermaid
8. Song Of Her
9. Lady Day
10. Heaven
11. There Is A Balm In Gilead
12. Prayer

Charles Lloyd - tenor saxophone
John Abercrombie - guitar
Brad Mehldau - piano
Larry Grenadier - bass
Billy Higgins - drums
Darek Oles - bass (track 12)

Recorded in December 1999 at Cello Studios, Los Angeles.

Charles Lloyd / Montreux 82

残念ながら、この貴重なライブ音源はCD化されていない。LPでも再発されていないので、完全な廃盤状態にある。まだ現役を続けているチャールス・ロイド。その不満はないのだろうか。ロイドとしては、40年近く前のライブなので、今さら騒ぎ立てても仕方ないということなのか。しかしである。聴き手側の立場で言えば、長い時間を経ても最高の演奏を最高の音質で聴きたいのだ。LPを手放してしまった自分のたわごとになるのだが。

さて、本作はミシェル・ペトルチアーニの参加が最大の聴きどころで、聴衆の反応も非常に良い。そして、何と言ってもForest Flowerの再演。1966年9月のモンタレー・ジャズ・フェスティバルでは、キース・ジャレットがバックを務めた。それから16年後、同じフェスティバルでペトルチアーニが見事なパフォーマンスを見せたのである。やはり、この時のライブ音源をコンプリートな形で聴いてみたいのだ。

1. The Call
2. Wind In The Trees
3. Very Early / Michel
4. Forest Flower - Sunrise / Sunset

Charles Lloyd - flute, oboe, tenor saxophone
Michel Petrucciani - piano
Palle Danielsson - bass
Son Ship Theus - drums

Recorded in July 1982 at The Montreux Jazz Festival.

Charles Lloyd / Love-In

サンフランシスコを中心にした西海岸で、1960年代後半から始まった「フラワー・ムーブメント」。合言葉は「ラブ&ピース」。スコット・マッケンジーが歌った「花のサンフランシスコ」が一つの象徴。1967年5月にリリースされた。その歌詞にはSummertime will be a love-in thereとある。

そして、本アルバムが録音されたのは1967年1月。サンフランシスコのフィルモア・オーディトリアムでのライブ演奏。時間軸が逆転するので、すでにLove-Inという言葉が定着していたのだろう。チャールス・ロイドが、キース・ジャレット達を引き連れてのライブ演奏だったが、ロイドのフルート、キースのピアノ、ディジョネットのドラムという個々の視点で捉えるアルバムではない。ベトナム戦争反対の運動の中で、ロックだけでなくジャズも関わってきた事実を認識すべきなのだろう。しかしながら、ビートルズのアルバムRevolverに収録されたHere, There and Everywhereをロイドが演奏したのは、ロックへ迎合した感じで、何とも後味が悪い。この曲でのキースのピアノも余興みたいだ。

1. Tribal Dance
2. Temple Bells
3. Is It Really The Same?
4. Here, There And Everywhere
5. Love-In
6. Sunday Morning
7. Memphis Blues Again - Island Blues

Charles Lloyd - tenor saxophone, flute
Keith Jarrett - piano
Ron McClure - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on January 27, 1967 at the Fillmore Auditorium, San Francisco, CA.