Chick Corea / The Leprechaun

録音データが怪しく、1975年としか記載されていない。詳しいデータがなければアルバムを評価できないのかと問われてしまうと答えに詰まるのだが、ジャズを年代的に追いかけている自分としては、重要な要素の一つであることは間違いない。75年1月にキースはケルン・コンサート、同年2月にマイルスは日本公演でアガルタとパンゲアに臨んだ。

チック・コリアは、そういった状況を踏まえて本アルバムの構想を練ったのか。それとも、我関せずだったのか。どちらにしても、キースやマイルスとは真逆の方向を示したアルバムである。全8曲、完璧なスコアを用意したのだろう。インプロビゼーションは皆無に等しい。チック自身が書いている解説の表題はArt and Imagination Belong to One Another(芸術と創造力は一心同体)。本文の中にも「即興性」という言葉は出て来ない。ジャズピアニストであることを放棄したチック・コリアがここにいる。

1. Imp's Welcome
2. Lenore
3. Reverie
4. Looking At The World
5. Nite Sprite
6. Soft And Gentle
7. Pixiland Rag
8. Leprechaun's Dream

Chick Corea - piano, keyboards, organ, synthesizer, percussion
Danny Cahn, John Gatchell, Bob Millikan - trumpet
Wayne Andre, Bill Watrous - trombone
Joe Farrell - saxophone
Ani Kavafian, Ida Kavafian - violin
Louise Shulman - viola
Fred Sherry - cello
Eddie Gomez, Anthony Jackson - bass
Steve Gadd - drums
Gayle Moran - vocals

Recorded in 1975.

Chick Corea / Crystal Silence

2021年2月9日、チック・コリア逝く。享年79。また一人、1960年代以降のジャズを支えて来た偉大なミュージシャンが去ってしまった。コリアを偲び、CD棚から取り出したのは本作。1972年11月録音。コリアのピアノとゲイリー・バートンのヴァイブによるデュオ。機能的に良く似ている二つの楽器でのデュオは極めて珍しい。

演奏の中で、それぞれの役割を演じ、瞬時に攻守を切り替えるのは簡単なことではない。録音データによれば、全9曲を一日で仕上げたことになる。あっぱれだった。そして、合掌。

1. Senor Mouse
2. Arise, Her Eyes
3. I'm Your Pal
4. Desert Air
5. Crystal Silence
6. Falling Grace
7. Feelings And Things
8. Children's Song
9. What Game Shall We Play Today

Chick Corea - piano
Gary Burton - vibraphone

Recorded on November 6, 1972 at Arne Bendiksen Studio, Oslo, Norway.

Chick Corea / Return To Forever

今日は「海の日」。すぐに思い付いたのは、坂田明のアルバム『海』。しかし、2019年1月14日のブログですでに取り上げていた。次に思い付いたのが本アルバム。リアルタイムで聴いたことを覚えている。高校に入ったばかりで、まだジャズ喫茶通いはしていなかったが、江古田駅近くにあったロック喫茶(店名は忘れた)で最初に聴いた記憶がある。LPのライナーノーツは油井正一氏が担当。タイトルを「20年周期で展開するジャズの歴史」として、本アルバムが録音されるに至った経緯を述べている。以下は、その抜粋。

ポスト・フリーはまだ端緒を切ったばかりだが『ビチェズ・ブリュー』に参加したマイルスのサイドメンの多くがその重要な担い手となっていることを見逃すわけにはゆかない。チック・コリアもその一人だ。マイルスの許を離れてつくった『サークル』というクワルテットは、70年代のジャズを指向したというよりも、60年代を総括したラスト・グループという見方を私はとる。サークルは、フリージャズの余熱がさめやらぬヨーロッパでは好評を得たが、アメリカに戻った途端に解体を迫られた。

この新作『リターン・トゥ・フォーエヴァー』は、あまりにも耳に快適な作品であるため、コリアの前作に比して、よりコマーシャルづいた作品のように受けとる向きもあるかもしれぬ。それは絶対に誤りである。常に歌心を失わぬコリアの真骨頂がここにある。

1. Return To Forever
2. Crystal Silence
3. What Game Shall We Play Today
4. Sometime Ago - La Fiesta

Chick Corea - electric piano, Fender Rhodes
Joe Farrell - soprano saxophone, flute
Stanley Clarke - acoustic bass, electric bass
Airto Moreira - drums, percussion
Flora Purim - vocals, percussion

Recorded on February 2 & 3, 1972 at A&R Studios, NYC.