Charles Mingus / Changes Two

アルバムChanges Oneの続編。と言っても、1974年12月の3日間で2枚分のアルバムを一気に録音している。詳細なデータは見つからないが、ほとんどワンテイクで録り終えたのではないだろうか。ライナーノーツはNat Hentoff(ナット・ヘントフ)が担当し、LPには諸岡敏行氏による翻訳が掲載されていた。以下は、そこからの抜粋。

「ミンガスはこの演奏に耳を傾けながら、このアルバム、そして同時発売された姉妹盤Changes Oneを、過去行った録音の中でも最高の部類に入ると言い切った。ここには気心の知れたミュージシャン間の相互浸透、独創的なソロを有機的につなぐ素材の完璧な把握、そして集団としてのあふれるような権威がある」。ミンガス自身が太鼓判を押し、ヘントフが絶賛するアルバム。1974年1月のカーネギーホールでのライブでミンガスは完全復帰し、本作で大きな一歩を踏み出すことになった。まさしくChangesなのである。

1. Free Cell Block F, 'Tis Nazi U.S.A.
2. Orange Was The Color Of Her Dress, Then Silk Blue
3. Black Bats And Poles
4. Duke Ellington's Sound Of Love
5. For Harry Carney

George Adams - tenor saxophone
Jack Walrath - trumpet
Don Pullen - piano
Charles Mingus - bass
Dannie Richmond - drums
Marcus Belgrave - trumpet (track 4)
Jackie Paris - vocals (track 4)

Recorded on December 27, 28 & 30, 1974 at Atlantic Recording Studios, NYC.

Charles Mingus / Changes One

アーチー・シェップが1972年1月に録音したアルバムAttica Bluesは、前年71年9月9日にニューヨーク州アッティカの刑務所で起こった囚人暴動がきっかけ。このアルバムの原田和典氏によるライナーノーツには「囚人の半数以上がアフリカ系アメリカ人およびプエルトリカンだったのに対し、看守は全員白人であり、ニガー・スティックなる棍棒等でのリンチは日常茶飯事だったと伝えられる。暴動を知ったニューヨーク州知事ネルソン・ロックフェラーは州兵に武力弾圧を命じ、39人に死をもたらした」と記している。

シェップの録音から3年近く経った74年12月。ミンガスは、1曲目のRemember Rockefeller At Atticaで、この事件を忘れるなと警告を鳴らした。タイトルをChangesとしたことに、ミンガスの強い思いがあったのだと思う。シェップのアルバム、そして本作の録音から50年近くが経過した。しかし、未だに人種差別の問題は根本的になくなっていない。ミンガスは、ジャズの世界で一時代を築き上げてきた。だが、その根底には「黒人差別」があったのである。

1. Remember Rockefeller At Attica
2. Sue's Changes
3. Devil Blues
4. Duke Ellington's Sound Of Love

George Adams - tenor saxophone
Jack Walrath - trumpet
Don Pullen - piano
Charles Mingus - bass
Dannie Richmond - drums

Recorded on December 27, 28 & 30, 1974 at Atlantic Recording Studios, NYC.

Charles Mingus / Mingus At Carnegie Hall

糖尿病を乗り越え復帰した1972年2月録音のFriends In Concertは、企画モノで商業的なアルバム。73年10月録音のMingus Movesは、ミンガス節が出ているのだが毒気はまだなかった。そして、74年1月録音の本作によってミンガスは完全に復帰した。それを支えたのは、このセッションに参加したミュージシャン達。なかでも盲目のサックス奏者ローランド・カークは大熱演。

ジャケットを見ても、「コンポーザーと言われる時もあるけど、オレはベーシストだからね」という主張が伝わってくる。ジャズが本来持っているエネルギーを感じるアルバム。LPのライナーノーツは、76年3月に31歳で死去した中野宏明氏が担当。ミンガスを「怒りや笑いといった人間の直接的感情に基づく音楽の場を作りだす」と書いている。名著『ジャズはかつてジャズであった』を遺した中野氏らしい表現。

1. C Jam Blues
2. Perdido

George Adams - tenor saxophone
John Handy - tenor saxophone, alto saxophone
Rahsaan Roland Kirk - tenor saxophone, stritch
Charles McPherson - alto saxophone
Hamiet Bluiett - baritone saxophone
Jon Faddis - trumpet
Don Pullen - piano
Charles Mingus - bass
Dannie Richmond - drums

Recorded on January 19, 1974 at Carnegie Hall, NYC.