Charles Mingus / Pithecanthropus Erectus

LPのジャケット裏面には、ミンガス自身による長文の解説が掲載されている。このアルバムは何度となく聴いてきたが、初めて自分で訳してみた。まず、ミンガスの「ジャズ・ワークショップ」の演奏スタイルが書かれている。「ピアノでフレームワークを演奏し、自分の解釈と感覚、そして使用するスケールとコード進行をメンバーに精通してもらう」とある。つまり、ミンガスは譜面を配らないと言う事だ。まさしくワークショップ。ミンガスが課題を投げ掛け、メンバー全員で議論を積み重ねながら解いていくと言う手法。そのスタイルを前提として、収録した4曲を次のように説明している。

「Pithecanthropus Erectus(直立猿人)」。4つのムーブメント。進化、優越感、衰退、破壊。テンポと強度が増してクライマックスに向かう。死にかけている生物が息を切らしてから、必死の動きをするように、最終的な破壊を示している。「A Foggy Day」。私はロンドンには行ったことがないので、サブタイトルはサンフランシスコの霧の日。トラック、ケーブルカー、群衆の乱闘、交通の乱れ、警笛、酔っぱらい。霧に包まれた都会の喧騒を再現した。「Profile Of Jackie」。音楽絵画のバラード。「Love Chant」。標準的なコードを使い、それを拡張していくスタイル。曲のムードを維持しながら、演奏は無制限な自由を可能としている。

翻訳は苦労したが、ミンガスに一歩近づいた気がする。

1. Pithecanthropus Erectus
2. A Foggy Day
3. Profile Of Jackie
4. Love Chant

J.R. Monterose - tenor saxophone
Jackie McLean - alto saxophone
Mal Waldron - piano
Charles Mingus - bass
Willie Jones - drums

Recorded on January 30, 1956 at Atlantic Studios, NYC.

Charles Mingus / The Charles Mingus Quintet + Max Roach

マックス・ローチが1曲だけ参加しているアルバムMingus At The Bohemiaの姉妹編。本アルバムは、タイトルにローチの名前を入れてあるが、2曲のみの参加。1955年12月23日のカフェ・ボヘミアでのライブで、音源が残っているローチのドラムは次の3曲(Wikipediaから引用)。
1. Percussion Discussion (Mingus, Max Roach) - 8:25
2. Drums (Mingus, Max Roach) - 5:38
3. I'll Remember April (Gene de Paul, Patricia Johnston, Don Raye) - 13:13

1と2はミンガスとローチの合作で、明らかに即興演奏だろう。アルバムのリリースに際し、思い付きでタイトルを付けたに違いない。問題は3のI'll Remember April。ジャケットもWikipediaと同じ記載になっている。Gene de Paul(ジーン・デ・ポール)の作品で、ジャズのスタンダード曲。そして、WikipediaにはThe actual melody of "I'll Remember April" is not playedと注釈がある。演奏はポール作のI'll Remember Aprilとは明らかに異なるのだ。レーベルDebutが1964年に最初にリリースした時にミスをしたのか、それともミンガスがI'll Remember Aprilのコード進行を借りたとDebutに伝えたのか。いずれにしても、録音から9年経ってのリリース、さらには今から65年前のことなので、真相は不明である。

1. A Foggy Day
2. Drums
3. Haitian Fight Song
4. Lady Bird
5. I'll Remember April
6. Love Chant

George Barrow - tenor saxophone
Eddie Bert - trombone
Mal Waldron - piano
Charles Mingus - bass
Willie Jones - drums (tracks 1,3,4,6)
Max Roach - drums (tracks 2,5)

Recorded on December 23, 1955 at The Cafe Bohemia, Greenwich Village, NYC.

Charles Mingus / Mingus At The Bohemia

ミンガスのディスコグラフィーによると、1955年12月23日のカフェ・ボヘミアでのライブ演奏は、本アルバム、Chazz!、The Charles Mingus Quintet + Max Roachの3枚に分かれている。だが、Chazz!は完全な廃盤状態で、The Charles ...に吸収された形になっていることが分かった。これまでChazz!を探し続けてきたが、方針を変えてThe Charlesを探し出し、さっそく注文。

本アルバムのLP裏面には、マル・ウォルドロンによる全曲の解説が掲載されていて、THIS IS A Jazz Workshop album!と始まる。そして、マックス・ローチとミンガスのデュオによる3曲目のPercussion Discussionについては、This is, in my estimation, the best track on the date.(この日の最高のトラックである)と絶賛。しかしながら、ミンガスはあとからセロを重ね合わせたようだ。それを含めたウォルドロンの評価なのかは不明。いずれにしても、自分が生まれるほぼ一年前に、冬のニューヨークで熱いライブがあったことは事実だ。

1. Jump Monk
2. Serenade In Blue
3. Percussion Discussion
4. Work Song
5. Septemberly
6. All The Things You C#
7. Jump Monk [alternate take]
8. All The Things You C# [alternate take]

George Barrow - tenor saxophone
Eddie Bert - trombone
Mal Waldron - piano
Charles Mingus - bass (all tracks), cello (track 3)
Willie Jones - drums (except track 3)
Max Roach - drums (track 3)

Recorded on December 23, 1955 at The Cafe Bohemia, Greenwich Village, NYC.