Charles Mingus / 自伝・敗け犬の下で

1973年9月30日発行 晶文社 定価1500円。363ページ。内藤忠行氏によるミンガスの写真集から始まる。全16カット。その中には植草甚一とのツーショット。巻末には、佐藤秀樹氏によるミンガスのディスコグラフィーを掲載。1980年頃に古本で購入した。その当時、自分に有用だったのは、この写真集とディスコグラフィーのみ。『自叙伝』となっているが、ジャズマンとしての自叙伝ではない。以下の『訳者あとがき』にあるように、ファッツ・ナバロを回想しながら、自らを「チャールズ」と三人称として、やみくもにペンを走らせた体験記。ページはめくったが、読み込んではいない。

「この自叙伝は、初め1500頁にもなる大部な私家版の形として彼の友人知己に配られたが、クノップ社の懇請により、ミンガスに親しいネル・キング婦人が縮小し編集し直して公刊の運びとなったものである。〈中略〉本書はあくまでも自らの手で綴られた、1950年ファッツ・ナバロの死を見とるまでの彼の魂の経緯である」。

Charles Mingus / Something Like A Bird

1978年1月18,19,23日のセッションが、アルバムMe, Myself An EyeとSomething Like A Birdに分散された。ミンガスは56歳で79年1月5日に他界。正確なリリースの日付は不明だが、前者が79年、後者が80年である。

2枚のアルバムでは、ミンガスはコンポーザーとアレンジャーの位置付け。彼のベースを聴くことはできないが、隅から隅までミンガス・ミュージックが響き渡る。本作のジャケットには、"HIS LAST RECORDING SESSIONS"の小さな文字。そして、ジャケットに写ったミンガスは、天国で静かに自分の2枚のアルバムを聴いているように思えるのだ。

1. Something Like A Bird
2. Farewell, Farwell

Daniel Block, Michael Brecker, Ricky Ford, John Tank - tenor saxophone
George Coleman - alto saxophone, tenor saxophone
Ken Hitchcock - alto saxophone, tenor saxophone
Lee Konitz, Charles McPherson, Yoshiaki Malta, Akira Ohmori - alto saxophone
Pepper Adams, Ronnie Cuber, Craig Purpura - baritone saxophone
Slide Hampton, Jimmy Knepper, Keith O'Quinn - trombone
Randy Brecker, Mike Davis - trumpet
Jack Walrath - trumpet, arranger
Larry Coryell, Ted Dunbar, Danny Toan, Jack Wilkins - guitar
Bob Neloms - piano
Kenny Werner - electric piano
Eddie Gomez, George Mraz - bass
Joe Chambers, Dannie Richmond - drums
Ray Mantilla - percussion
Charles Mingus - composer, arranger
Paul Jeffrey - conductor

Track 1
Recorded on January 18, 1978 at Atlantic Studios, New York, N.Y.

Track 2
Recorded on January 23, 1978 at Atlantic Studios, New York, N.Y.

Charles Mingus / Cumbia & Jazz Fusion

ミンガスには「闘争」というイメージがある。ウッドベースという楽器を使い、ジャズという音楽を通じて、社会の矛盾に対して闘ってきた。しかし、このアルバムは、音楽は、ジャズは楽しいんだ!と訴えている。一曲目の後半から、ミンガスのボーカル(叫び)が入る。「よし!もっと盛り上がろうぜ!!」みたいな感じだ。ミンガスのアルバムは45枚所有していて、その半分近くのジャケットがミンガスの写真。唯一、ミンガスが微笑んでいるのは、このアルバムだけ。Cumbia(クンビア)とは、南米コロンビアの沿岸地方に伝統的に伝わるリズムと舞曲のこと。このクンビアとジャズとの融合を図ったミンガス・ミュージックの総決算と言いたい。

LPのライナーノーツには、油井正一、岩浪洋三、佐藤秀樹、ナット・ヘントフの4氏が名を連ねている。その中で、ヘントフの解説にミンガスのボーカルの内容が書かれていた。「コロンビアでは、山に住むインディオは貧しく、ときどき街におりてきては、金持ちたちの唄をうたう。なにももたないことと、もちすぎていることの、違いをうたった歌だ。それがわたしをとらえて、アメリカのゲットーに思いを馳せさせた、というのは、ゲットーの黒人たちだって、金はないからね。それに、彼らだって望んでいるんだ、わたしがうたうような〈人生のいいものをすべて〉」。金なんかなくても、人生を楽しもう!という感じだろうか。

1. Cumbia & Jazz Fusion
2. Music for "Todo Modo"

Charles Mingus - bass, vocals, percussion, arranger
Jack Walrath - trumpet, percussion
Dannie Richmond - drums

Track 1
Jimmy Knepper - trombone, bass trombone
Mauricio Smith - flute, piccolo, soprano saxophone, alto saxophone
Paul Jeffrey - oboe, tenor saxophone
Gene Scholtes - bassoon
Gary Anderson - contrabass clarinet, bass clarinet
Ricky Ford - tenor saxophone, percussion
Bob Neloms - piano
Candido - congas
Daniel Gonzales - congas
Ray Mantilla - congas
Alfredo Ramirez - congas
Bradley Cunningham - percussion
Recorded on March 10, 1977 in NYC.

Track 2
Dino Piana - trombone
Anastasio Del Bono - oboe, english horn
Pasquale Sabatelli - bassoon
Roberto Laneri - bass clarinet
Giancarlo Maurino - alto saxophone (uncredited)
Quarto Maltoni - alto saxophone
George Adams - tenor saxophone, alto flute
Danny Mixon - piano, organ
Recorded on March 31 and April 1, 1976 at Dirmaphon Studio, Rome, Italy.