Cecil Taylor / Dark To Themselves

1976年6月18日のユーゴスラビアでのライブアルバム。所有していたLPは、A面がStreamsで23分0秒、B面がChorus Of Seedで26分12秒だった。CD化によって、Streams And Chorus Of Seed という1曲のみの形になった。演奏時間は61分48秒。つまり、1時間以上の演奏をLPに収めるため、12分以上をカットしていたのだ。フロント3管、ピアノ、ドラムの構成。セシル・テイラーのベースレスによるアプローチは、より自由な音空間を手に入れるためだったのだろう。

1時間休みなしの圧倒的なパフォーマンスに、当時のユーゴスラビアの聴衆は何を感じたのか。曲の途中(A面の終わり)で拍手が湧きあがり、曲の最後も拍手で終わる。それはLPのことで、CDでは演奏の最後のみに拍手。しかし、決して大興奮という雰囲気ではなく、統率されたようでもない。「素晴らしい演奏だけど、この程度のフリーさじゃ、それほどは興奮しないね」みたいな感じ。ところで、タイトルDark To Themselvesは何を意味しているか。ジャケット裏にはテイラーの詩が載っている。その一文にDark night vacant shadows peep the borrowed friend(暗い夜の空虚な影が借り物の友人を覗き込む)とあるが、テイラーのピアノ以上に難解である。

1. Streams And Chorus Of Seed

Jimmy Lyons - alto saxophone
David S. Ware - tenor saxophone
Raphe Malik - trumpet
Cecil Taylor - piano
Marc Edwards - drums

Recorded on June 18, 1976 at The Ljubljana Jazz Festival, Yugoslavia.

Cecil Taylor / Garden

セシル・テイラーのピアノソロ・ライブ。全8曲で約90分の演奏なので、2時間ほどのコンサートだったと思われる。この2枚組LPを購入してから、テイラーのアルバム購入は途絶えた。その理由は、かなり期待して購入したにもかかわらず、ほとんど心揺さぶられなかったためである。ライブを体験していれば、また違ったのかも知れないが、1980年代初めのピアニストの自分の興味は、キース・ジャレットや山下洋輔にあった。そのキーワードは「進化」。残念ながら、テイラーのこのアルバムには「進化」を感じ取ることができなかったのだ。

ライナーノーツで、青木和富氏が次のように指摘している(1983年5月付け)。「この〈ガーデン〉の圧倒的な2枚組のソロ・プレイは、さしあたって現在のその闘士ぶりを伝える最も感動的な作品である。70年代初めから、セシルは幾度もこのソロ・プレイに挑戦している。しかし、その頃のプレイとこれを比較して聴けば判るが、この壮大な建築物はいままでにないミステリーがある」。青木氏が闘士テイラーに感動したのは理解できるのだが…。なお、本作はCD化されているが、なぜか2つのCDに分けられジャケットも変えてしまっている。これもミステリーなのだ。

1. Éléll
2. Garden II
3. Garden I
4. Stepping On Stars
5. Introduction To Z
6. Driver Says
7. Pemmican
8. Points

Cecil Taylor - piano

Recorded on November 16, 1981 at Basel Switzerland.

Cecil Taylor / Calling It The 8th

圧倒的。このアルバムを最初に聴いて浮かんだ言葉。そして、山下洋輔トリオを連想した。本作がライブ録音された1981年の頃、洋輔は、武田和命(ts)、国仲勝男(b)、小山彰太(d)というメンバーで活動していた。アルバムは『寿限無』。トリオでなくベースが入った構成。本作と同様である。

『寿限無』には明確なコンセプトがあり、その中でのフリーである。一方、このアルバムCalling It The 8thは暗号のようなタイトルで、コンセプトを伏せている。聴き手に何も連想させず、ただひたすらに耳を傾け、全身で聴けと言っているようだ。セシル・テイラーの恐ろしさを感じる。なお、CD化は望めそうにない。

1. Calling It The 8th - I
2. Calling It The 8th - II
3. Calling It The 9th

Jimmy Lyons - alto saxophone, vocals
Cecil Taylor - piano, vocals
William Parker - bass, vocals
Rashid Bakr - drums, vocals

Recorded on November 8, 1981 in Freiburg Germany.