戸井十月 / 道、果てるまで

2011年4月15日発行(新潮社 定価1,600円)。決してジャズとは無関係の本ではない。戸井十月氏とは、短い期間だったが一緒に仕事をさせていただいた。なので、「戸井さん」と呼ばせてもらいたい。戸井さんがユーラシア大陸を横断したのは、2009年7月から11月。この旅の途中で61歳を向かえた。つまり、60歳になって5大陸目の旅の計画を進めていた訳である。戸井さんは、こう書いている。

人は誰も、生から死へ至る途上を生きている。
人生も旅も過程(プロセス)だ。
どこに辿り着いたかではなく、どこに向かっているのかが肝要ではないだろうか・・・。

ポルトガルのロカ岬から120日間かけてウラジオストクに到着した日のことをエピローグに書いている。「その夜、私が敬愛するジャズミュージシャンの坂田明氏から、こんなメールが届いた。〈無事完走おめでとう!人生における素晴らしい快挙に祝福を!!良くやりましたね。チームの皆さんにもおめでとうを送ります。敬服の限りであります。(中略)とにかく拍手、拍手、拍手。終わった時ぐらい、いい気持で誇らしくして下さい。どうせ、後はさりげなく、いつもどおりだから〉」。

2013年8月25日の「戸井十月の新たな旅立ちを見送る会」に参列。生前、戸井さんとは少しだけジャズの話をした記憶がある。戸井さんが坂田明とつながっていることを知っていたら、もっと深い話ができたはずなのに…。

高田渡 / バーボン・ストリート・ブルース

2008年4月1日発行 ちくま文庫 720円。単行本720円ならば買いとAmazonで購入。しかし、送られてきた箱は軽かった。開けてみると文庫本だった。正直、失敗したと思った。ネットで詳しく調べると、この自伝は2001年8月に山と渓谷社から単行本で発刊されたが、今は古本市場にほとんど出回っていないらしい。だが、読み進むと面白くて仕方がない。ページが進んで終わりに近づくのが惜しくなる。旅の終わりのようだ。そう、この本で渡と旅をしているような気分になる。以下は、文庫裏表紙の解説。

『フォークソングが一世を風靡した頃、奇妙な曲「自衛隊に入ろう」が話題になった。「あたりさわりのないことを歌いながら、皮肉や揶揄などの香辛料をパラパラふりかけるやり方が好き」な高田らしいデビュー曲である。以後、世の流行に迎合せず、グラス片手に飄々と歌い続けて40年。いぶし銀のような輝きを放ちつつ逝った、フォークシンガー高田渡の酔いどれ人生記』。

鈴木良雄 / 人生が変わる55のジャズ名盤入門

2016年末に前職を定年退職。それを記念?して、翌17年8月後半に5回目の『青春18きっぷ』の一人旅に出た。糸魚川(黒部へ寄り道)、秋田、弘前、盛岡という行程。旅の仕上げは、盛岡のジャズ喫茶『開運橋のジョニー』で鈴木良雄さんのライブを満喫。その場で直接ご本人から購入したのが本書(発行:竹書房 2016年2月11日 1,000円+税)。その時点では、55枚中の4枚が未所有。現在では全て揃えることができた。ようやく「人生が変わった」ということだろうか。

ジャズマンが書いた本なので、実体験が記載されていて楽しく読める。例えば、モダン・ジャズ・カルテットの〈ジャンゴ〉のページ。「大学の頃は、雀荘にいるかジャズ研の部室にいるか、新宿のジャズ喫茶にいるか・・・でしたからね」。全く同じである。自分の場合は、新宿ではなく中野か吉祥寺だったけれど。鈴木さんはちょうど人生の10年先輩。ジャズ研とは人生を勉強する場所なのである。