Billy Harper / The Believer

ビリー・ハーパーは、1973年に初リーダーアルバムCapra Blackをリリース。20枚目を2013年に出して、その後は途絶えている。その40年間は、ちょうど2年に1枚のペース。このことから、じっくりと構想を温めてアルバム創りをするタイプであることが分かる。風貌からも寡黙のジャズマンという感じ。

このアルバムは、タイトル通りBelieveという単語が入っている3曲で構成。これらは組曲と捉えたい。所有するLPのライナーノーツには、それぞれに邦題が記載されている。Is It Not True, Simply Because You Cannot Believe It?(疑惑のきざし)、I Do Believe(めざめの時)、Believe, For It Is True!(真実のふれあい)。まぁ悪くはないが、クエスチョンマークとビックリマークが活かされていない。ちなみに、プロデューサー、エンジニア、デザイナーなどには日本人の氏名がクレジットされている。邦題が先で、それを英語にしたのかも知れない。

さて、リーダーアルバムは途切れているが、ハーパーが中心となって、The Cookersというグループを2010年に立ち上げ現在も活動中。2021年9月にアルバムLook Out!をリリースした。1943年1月17日生まれのハーパーは、今も現役である。なお、本作はCD化されているが、中古市場にはほとんど出回っていない。

1. Is It Not True, Simply Because You Cannot Believe It?
2. I Do Believe
3. Believe, For It Is True!

Billy Harper - tenor saxophone
Everett Hollins - trumpet
Armen Donelian - piano
Greg Maker - bass
Malcolm Pinson - drums

Recorded on February 15, 1980 at Power Station Studios, NYC.

Billy Harper / Somalia

決して時代に迎合することなく、自分らしいジャズを切り開いてきたビリー・ハーパー。本アルバムは、ハーパーの代表作と言っていいだろう。明確なメッセージを持ったアルバムだと思う。所有する輸入盤CDの中では、ハーパー自身は何も語っていないが、ライナーノーツを担当したGene Kalbacherによると、こんなハーパーの発言を引用している。

"I simply have to put all my energy into doing the music. The best way I can speak to the world about the conditions in Somalia, or about the conditions in my own life, is through my music."(私はただ単に音楽へ全力を注いでいく。ソマリアの状況、自分自身の状況について世界に伝える最善の方法は、私の音楽を通してなのだ)。本作の録音は1993年10月。ソマリアをWikipediaで調べたら、以下のような記述があった。

「1991年勃発の内戦により国土は分断され、事実上の無政府状態が続いていた。のちにエチオピアの軍事支援を受けた暫定政権が発足し、現在では正式な政府が成立したが、依然として一部地域を他の国家であると主張する政府が統治している」。ちなみに、録音データにあるshekereという楽器。「シェケレは、西アフリカ(ヨルバ族)起源の伝統的な民俗音楽の楽器で、大きな中空の瓢箪の周りに植物の種子・豆・ビーズ・貝などを通した網を編んで張り巡らせた打楽器」とのこと。

1. Somalia
2. Thy Will Be Done
3. Quest
4. Light Within
5. Quest In 3

Billy Harper - tenor saxophone, cowbell, vocals
Eddie Henderson - trumpet
Francesca Tanksley - piano
Louie "Mbiki" Spears - bass
Newman Taylor Baker - drums (right channel)
Horacee Arnold - drums (left channel)
Madeleine Yayodele Nelson - shekere (tracks 1,4)

Recorded on October 18 & 21, 1993 at the Power Station, NYC.

Billy Harper / In Europe

タイトルはイン・ヨーロッパだが、イタリア・ミラノでのスタジオ録音。全3曲、ビリー・ハーパーのオリジナル。LPのライナーノーツ(1983年10月31日付け)では、悠雅彦氏がハーパーの次の言葉を引用している。

「音楽はきわめて重要なものだし、まさに厳粛とでもいうべきものだ。私にとってはいわば宗教であり、生活であり、愛であり、真実なのだ。音楽にはまた少しでも思想と誠実さがなければならない。〈中略〉音楽家が真実や霊的なもののリアリティーに近づけば近づくほど、その音楽はこれにふさわしい内容をもつようになるのだと私は思う」。まさに、この言葉通り、ハーパーの全身全霊をかけたアルバムである。CD化でボーナストラックを期待したのだが…。まぁ、3曲で十分に魂が揺さぶられる構成なのだ。

1. Priestess
2. Calvary
3. Illumination

Billy Harper - tenor saxophone
Everett Hollins - trumpet
Fred Hersch - piano
Louie "Mbiki" Spears - bass
Horace Arnold - drums

Recorded on January 24 & 25, 1979 at Barigozzi Studio in Milano, Italy.