Art Taylor / A.T.'s Delight

名脇役アート・テイラーのリーダーアルバム。だからと言って、ドラムが前面に出ている訳ではない。相も変わらず、見事なサポート役に徹している。なのに、コンガを加えている。しかも、ちょっとした味付けではなく、全6曲中の3曲。岡崎正道氏がライナーノーツで「コンガが加わって、いっそうリズム面でもカラフルな色彩感をもつプレイが繰りひろげられてゆくのが聴きものになっている」と書いている。

テイラー名義のアルバムなので、必然的に聴き手はドラムを中心に耳を傾ける。ところが、このコンガが邪魔で仕方ないのだ。もしかすると、LPではA面コンガなし、B面コンガありという構成だったのかと調べたが、CDと同じで2, 3, 5曲目にコンガを配置。プロデューサーはアルフレッド・ライオン。「粋」なジャケットだけど、「野暮」なメンバー構成。1, 4, 6曲目を聴くべきアルバム。

1. Syeeda's Song Flute
2. Epistrophy
3. Move
4. High Seas
5. Cookoo And Fungi
6. Blue Interlude

Stanley Turrentine - tenor saxophone
Dave Burns - trumpet (tracks 1-4,6)
Wynton Kelly - piano (tracks 1-4,6)
Paul Chambers - bass
Art Taylor - drums
Carlos "Potato" Valdes - conga (tracks 2,3,5)

Recorded on August 6, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Anita O'Day / Anita Sings The Most

所有するアニタ・オデイのアルバムはこの1枚なので、あれこれと論じる資格はない。だが、このアルバムがオディの魅力を十分に引き出しているのは事実だろう。しかし、全11曲を一日の録音で済ませたのは、ちょっと信じ難い。それなりの音合わせをしてからレコーディングに臨んだのではないか。

だとすれば、このメンバーでライブ演奏していれば、もっと迫力のあるアルバムになったはずだ。観客の反応に刺激を受け、オディがエキサイトする歌声を聴いて見たかった。つまり、一曲一曲は小気味よいのだが、アルバム全体の抑揚がいま一つ足りない。

1. 'S Wonderful / They Can't Take That Away From Me
2. Tenderly
3. Old Devil Moon
4. Love Me Or Leave Me
5. We'll Be Together Again
6. Stella By Starlight
7. Taking A Chance On Love
8. Them There Eyes
9. I've Got The World On A String
10. You Turned The Tables On Me
11. Bewitched, Bothered And Bewildered

Anita O'Day - vocals
Oscar Peterson - piano
Herb Ellis - guitar
Ray Brown - bass
John Poole - drums

Recorded on January 31, 1957 at Universal Studios in Chicago.

Andre Previn / King Size!

2019年2月28日、アンドレ・プレヴィンが亡くなった。89歳。プレヴィンはジャズ畑ではなくクラシック畑の音楽家。1929年4月6日にベルリンで生まれ、ナチスの迫害から逃れるため、家族に連れられ39年にアメリカへ渡った。その約20年後の58年11月、30歳になる前に録音したアルバム。

ジャズがどんどん尖っていった時代。プレヴィンは、そんな周囲のことを気にせず、自分のペースでピアノトリオによる録音に臨んだ。聴きどころはスタンダード中のスタンダードYou'd Be So Nice To Come Home Toで、他のプレイヤーには見られない曲の構成と音の使い方をしている。それはアルバム全体にも言え、クラッシク的な要素が随所に出てくる。プレヴィンは思い通りのアルバムができたと自負したはずだ。その証拠にライオンの尻尾が笑っている。

なお、所有するプレヴィン名義のアルバムはこの1枚だけだが、1956年8月に録音されたシェリー・マン名義のピアノトリオ・アルバムMy Fair Ladyは所有している。

1. I'll Remember April
2. Much Too Late
3. You'd Be So Nice To Come Home To
4. It Could Happen To You
5. Low And Inside
6. I'm Beginning To See The Light

Andre Previn - piano
Red Mitchell - bass
Frankie Capp - drums

Recorded on November 26, 1958 at Contemporary Records Studio in Los Angeles, CA.