Art Pepper / The Art Of Pepper

ライナーノーツを読むと、このアルバムは最初にオープンリールテープで販売されたらしい。カセットテープが開発されたのが1962年なので、オーディオの歴史を振り返ってしまう。今や、音楽はネットからダウンロード、もしくはクラウドに保管する時代であるから、「モノ」の価値が変わってしまった。だが、音楽の中身の価値は変わらない。60年以上前のジャズの息吹を感じる一枚。いや、かつては一巻だったのだ。

CD帯から。「哀愁のアルト奏者の熱情がほとばしる絶頂期の名演。明快さの中に見え隠れする光と影。愁いに満ちた美しいフレーズが折り重なるように綴られてゆく」。美辞麗句が並び、アート・ペッパーの真髄を表現しているのだが、逆に言えば、もの凄い重量感やスピード感は味わえないということ。それはよしとしても、The Art Of Pepperという手抜きのタイトル。アート・ブレイキー、アート・ファーマー、アート・テイタム、アート・テイラー達は簡単にパクれる。アート・アンサンブル・オブ・シカゴだけは、そうはいかないのだが。

1. Holiday Flight
2. Too Close For Comfort
3. Long Ago And Far Away
4. Begin The Beguine
5. I Can't Believe That You're In Love With Me
6. Webb City
7. Summertime
8. Fascinating Rhythm
9. Body And Soul
10. Without A Song
11. The Breeze And I
12. Surf Ride

Art Pepper - alto saxophone
Carl Perkins - piano
Ben Tucker - bass
Chuck Flores - drums

Recorded on April 1, 1957 at Audio Arts, Los Angeles, CA.

Art Pepper / Meets The Rhythm Section

今さら特に語る必要のない名盤中の名盤。では、名盤とはしっかりしたコンセプトとメンバー間の意思疎通があって生まれるかというと、必ずしもそうでない。LPのライナーノーツは本アルバムのプロデューサーであるLester Koenig(レスター・ケーニッヒ)が担当。1957年4月2日付けで、翻訳監修は油井正一氏。輸入盤CDにはケーニッヒの原文が記載されている。

「セッションそれ自体は最悪な状況でスタートした。アートはその日の朝までセッションについて知らなかった。録音の日取りはアートの妻のダイアンがきめたのだが、彼女は彼がセッションのことを心配して固くなるのをおそれて黙っていたのである。2週間ほど演奏していなかったので、サックスは乾き切り、ネックのコルクはとれていた。レコーディングについては全くアイデアがなかった。そのうえ、誰もが前の晩遅かったため、スタートが遅れてしまった。しかし、〈ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ〉の最初のリハーサルが終わると、ハッキリした見通しがついた」。

1. You'd Be So Nice To Come Home To
2. Red Pepper Blues
3. Imagination
4. Waltz Me Blues
5. Straight Life
6. Jazz Me Blues
7. Tin Tin Deo
8. Star Eyes
9. Birk's Works

Art Pepper - alto saxophone
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums

Recorded on January 19, 1957 at Contemporary's Studios, Hollywood, CA.

Art Pepper / Modern Art

『モダン・アート』とは、大胆なタイトルを付けた。確かに『アート』は、ペッパーからの拝借なのだが、少し無理があったような気がする。ペッパー自身も、ジャケット写真では困った様子で下を向いてしまった。そんなことより、アルバムの中身はというと、非常にまとまりのある演奏になっている。

全8曲を一つの作品として聴くべきアルバム。ペッパー作Blues Inで始まり、ペッパー作Blues Outで閉じる。しかも、どちらもアルトとベースのデュオ。他に例を見ない粋なアイデア。だから、『モダン』なのかも知れない。CD化でボーナストラックが追加されたら逆に価値が下がったアルバム。ちなみに、本作リリース1年後の1958年9月にアート・ファーマーは、同じタイトルのアルバムを録音している。

1. Blues In
2. Bewitched
3. When You're Smiling
4. Cool Bunny
5. Diane's Dilemma
6. Stompin' At The Savoy
7. What Is This Thing Called Love?
8. Blues Out

Art Pepper - alto saxophone
Russ Freeman - piano (except tracks 1,8)
Ben Tucker - bass
Chuck Flores - drums (except tracks 1,8)

Tracks 1, 2, 6, 7 & 8
Recorded on December 28, 1956 at Radio Recorders, Hollywood, CA.

Tracks 3, 4 & 5
Recorded on January 14, 1957 at Master Recorders, Hollywood, CA.