Art Ensemble Of Chicago / Full Force

極論かも知れないが、Art Ensemble Of Chicago - AEOC の音楽は、いわゆるインタープレイとは全く逆の位置に存在するのではないかと思う。ワン・ツー・スリーで曲が始まっても、メンバーそれぞれが思いのままに演奏を始める。だが、それは自由気ままではなく、互いの主張を受け入れながら、潮が満ちるのを待っている。そして、ついには連鎖反応が起きてエネルギーの塊となっていく。

彼らがやってきた音作りは、そんな連鎖反応をどうやって起こすかに注力してきたのだろう。ライブ演奏での衣装やフェイス・ペインティングは一つの触媒だったはず(1984年4月の来日公演では、それを実感できた)。このアルバムでは、彼らの連鎖反応の瞬間を注意深く捉えるしかない。見事にFull ForceをキャッチできればAEOCにはまって行くという構図。

1. Magg Zelma
2. Carefree
3. Charlie M
4. Ol' Time Southside Street Dance
5. Full Force

Lester Bowie - trumpet, celeste, bass drum
Malachi Favors Maghostut - bass, percussion instruments, melodica
Joseph Jarman - saxophones, clarinets, percussion instruments, vocal
Roscoe Mitchell - saxophones, clarinets, flute, percussion instruments
Don Moye - drums, percussion, vocal

Recorded in January 1980 at Columbia Recording Studios, NYC.

Art Ensemble Of Chicago / Nice Guys

ジャズを言葉で伝えるのは、極めて難しい。マイルスの緊張感、コルトレーンの激しさ、モンクの不協和音。いくら言葉で形容しても空しくなるばかり。それを承知でArt Ensemble Of Chicago - AEOCの音楽を形容するならば、音楽の「軸」が違うことが前提で、アンサンブルの緊張感と言ってしまおう。ある楽器(例えば、マイルスのトランペット)に緊張感を感じるのではなく、AEOCが創る音楽にブルッと震えるのだ。

ジャケットの写真が面白い。「もっと刺激し合わなければだめだなぁ」という問いかけに「今日の新聞では、日本人のウエムラが単身イヌぞりで北極点に到達したらしい」「ならば、オレ達もソロ活動に重点をおこうか」と、朝のコーヒーでゆったりしとした1978年4月末の会話を想像する。Nice Guysだ。

1. Ja
2. Nice Guys
3. Folkus
4. 597-59
5. Cyp
6. Dreaming Of The Master

Lester Bowie - trumpet, celeste, bass drum
Joseph Jarman - reeds, percussion, vocal
Roscoe Mitchell - reeds, percussion
Malachi Favors Maghostus - bass, percussion, melodica
Famoudou Don Moye - drums, percussion, vocal

Recorded in May 1978 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg, Germany.

Art Ensemble Of Chicago / Fanfare For The Warriors

AEOCの音楽は、そのパフォーマンスは、ジャズという概念を超えたところにある。4ビートが基調にあるものの、リズムを根底にして音楽が形成されている訳ではない。時にはブルース的な要素や、R&B的なイメージが創出される。ましてや、フォーク的な雰囲気が出て来る時さえある。遊びなのか真面目なのか、それらの境目が明確には存在しない。聴き手をどんどん引き込むのでもなく、突き放すのでもない。

否定の否定的な音作り。どんな合図で曲想が変わっていくのかを捉えることも難しい。入念な音合わせをして作ったアルバムなのか、それとも一発勝負なのか。戦士への讃歌。このアルバムタイトルすら、何を意味しているのか分からない。何も分からないけど、AEOCを時に聴きたくなる。

シカゴで1965年に設立された非営利音楽団体AACM (Association for the Advancement of Creative Musicians)。設立時の代表者Muhal Richard Abrams(ムハール・リチャード・エイブラムズ)をピアニストして迎えたアルバム。

1. Illistrum
2. Barnyard Scuffel Shuffel
3. Nonaah
4. Fanfare For The Warriors
5. What's To Say
6. Tnoona
7. The Key

Lester Bowie - trumpet, percussion instruments
Malachi Favors Maghostut - bass, percussion instruments, vocals
Joseph Jarman - saxophones, clarinets, percussion instruments
Roscoe Mitchell - saxophones, clarinets, flute, percussion instruments
Don Moye - drums, percussion
Muhal Richard Abrams- piano

Recorded on September 6, 7 & 8, 1973 at Paragon Studios, Chicago.