Lee Morgan / The Sixth Sense

CD帯から。「ザ・サイドワインダーから始まったジャズ・ロック路線の最終章。幻のテナーサックス奏者フランク・ミッチェルを擁する3管編成で、多彩なリズムにアプローチ」。確かに、スイングジャーナル1976年4月臨時増刊『世界ジャズ人名辞典』には、ミッチェルの名前はなかった。そして、彼のWikipediaによると、参加アルバムは本作を含めて4枚のみで、「27歳で殺害されるまでアート・ブレイキーやリー・モーガンらと活動した」とある。「幻」が適切とは思わないが、短命で終わったミュージシャンである。

ライナーノーツで藤本史昭氏は、「フランク・ミッチェルを除いて全員がモーガンとの共演歴があり、かつジャズ・メッセンジャーズ経験者」と、2021年6月付けで書いている。これは明らかな間違い。ドラムのビリー・ヒギンズのみが、当然ながらメッセンジャーズの経験なし。

それよりも、CD帯にあるように「ジャズ・ロック路線」と称されることが多いこの時期のリー・モーガン。だが、必ずしも8ビートに執着していたわけではない。ザ・サイドワインダー以降のアルバムでは、参加メンバーが流動的であるものの、ヒギンスだけはほぼ固定。ヒギンズはオールマイティーのドラマー。モーガンはどんな曲想にも対応できるヒギンズがいたからこそ、様々なスタイルにチャレンジできたのだろう。その中の一つがロック調であることが、このアルバムを聴くとよく分かる。

1. The Sixth Sense
2. Short Count
3. Psychedelic
4. Afreaka
5. Anti Climax
6. The Cry Of My People
7. Extemporaneous
8. Mickey's Tune
9. Leebop

Tracks 1 - 6
Lee Morgan - trumpet
Jackie McLean - alto saxophone (tracks 1-5)
Frank Mitchell - tenor saxophone
Cedar Walton - piano
Victor Sproles - bass
Billy Higgins - drums
Recorded on November 10, 1967 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 7 - 9
Lee Morgan - trumpet
Frank Mitchell - tenor saxophone
Harold Mabern - piano
Mickey Bass - bass
Billy Higgins - drums
Recorded on September 13, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Thelonious Monk / Monk In Copenhagen

1961年4月から5月に、モンクはヨーロッパツアーを行った。ジャズのディスコグラフィーを網羅しているJAZZDISCO.orgのモンクのカタログを読むと、このツアーは4月15日のアムステルダムから始まり、5月16日のストックホルムで幕を閉じている。しかし、本作のデンマーク語Wikipediaによると、翌17日にコペンハーゲンでコンサートを行い、デンマーク放送が録音。それから35年経過した1996年、デンマークのレーベルStoryvilleからリリースされた、と記されている。国内盤リリースは2015年。なぜか、JAZZDISCO.orgには未だに掲載されていないアルバム。

このヨーロッパツアーの音源は、複数のアルバムに分散され、しかもマイナーレーベルが多く、国内で容易に入手できるのは、4月21日にミラノで録音したアルバムMonk In Italyと本作のみである。この2枚を続けて聴いた。例えば、Jackie-Ingは前者が4分53秒、後者が9分28秒。Rhythm-A-Ningは5分45秒と8分59秒。つまり、ツアーでライブを重ねる毎に、メンバー間の意思疎通が深まっていったことを示しているのだ。

ところで、ジャケット写ったベーシストは、ツアーに参加したJohn Ore(ジョン・オー)ではなく、Larry Ridley(ラリー・リドレー)と思われる。そして、モンクの顎髭に白髪が目立つので、70年代以降のショットだろう。オーは、93年までモンクと共演している(2014年に他界)。彼にとっては極めて失礼なアルバムで、JAZZDISCO.orgに対して「このアルバムを掲載するな!」とクレームを入れたのかもしれない。

1. Jackie-Ing
2. Crepuscule With Nellie
3. I Mean You
4. Rhythm-A-Ning
5. Epistrophy
6. Body And Soul
7. Well You Needn't
8. 'Round Midnight
9. Off Minor
10. Ba-Lue Boliver Ba-Lues-Are

Charlie Rouse - tenor saxophone (except track 6)
Thelonious Monk - piano
John Ore - bass (except track 6)
Frankie Dunlop - drums (except track 6)

Recorded on May 17, 1961 at Odd Fellow Palæet, Copenhagen, Denmark.

Art Blakey / Live At The 1972 Monterey Jazz Festival

モンタレー・ジャズ・フェスティバル・レコードが2007年に設立された。そして、1963年のマイルスのライブを筆頭にして、次々と過去の音源をリリースしていった。本作は、「ジャイアンツ・オブ・ジャズ」と称したユニットの72年9月のライブ。特にリーダーはいないが、アルバムは、Art Blakey and The Giants of Jazzとして、アート・ブレイキーをリーダー的位置付けにしている。そのことに異論はないが、参加メンバーにモンクがいることが最大の注目である。

モンクは、71年11月にロンドンで録音を行い、アルバムComplete Last Recordings: The London Collectionを残した。これが、モンク名義のラストアルバムである。モンクのディスコグラフィーを見ると、その後に参加したアルバムは2枚。その中の1枚が本作。もう一枚は、72年11月の「ジャイアンツ・オブ・ジャズ」のヨーロッパツアーを記録した国内盤LPがあるが、CD化されず廃盤状態。それ以外にも、海賊盤的なツアーの放送音源もあるようだ。

つまり、現時点で容易に入手できるモンクの最終音源を収録したアルバムなのである。せめて、ジャケットには、ブレイキーと共にモンクの写真も入れて欲しかった。

1. Introduction by Jimmy Lyons
2. Blue 'N' Boogie
3. 'Round Midnight
4. Perdido
5. Stardust
6. Lover Man
7. I Can't Get Started (With You)
8. The Man I Love
9. A Night In Tunisia

Sonny Stitt - alto saxophone, tenor saxophone
Kai Winding - trombone
Roy Eldridge - trumpet
Clark Terry - flugelhorn, trumpet
Thelonious Monk - piano
Al McKibbon - base
Art Blakey - drums

Recorded on September 16, 1972, at the Monterey Jazz Festival.