John Coltrane / Evenings At The Village Gate

1961年8月、62年前の貴重なライブ音源が、ニューヨーク公共図書館で発掘された。しかも、断片的な音源ではなく、1曲目のMy Favorite Thingsだけは演奏の途中から始まるものの、ほぼ完ぺきに全5曲を捉え、約80分で構成されているアルバム。

コルトレーンは、同年5月と7月にアルバムAfrica/Brassの録音に臨んだ。そして、11月には4日間に渡るビレッジ・バンガードでのライブを行い、11月後半から12月初めまでヨーロッパツアーに出た。この期間、エリック・ドルフィーは、コルトレーングループのメンバーだった。現時点で、この8月のビレッジ・ゲートでの音源は、ドルフィーがコルトレーンと共演した最初のライブになる。ドルフィーにとっては、大きく飛躍するきっかけになったと思われるのだが…。

シモコフ & テッパーマン著『エリック・ドルフィー』には、61年7月のファイブ・スポットでのセッションの箇所に、次のような一文を載せている。『ダウンビート誌の国際批評家投票において、アルトサックスの新人部門で第一位に輝いた時、ドルフィーはインタビューに答え「受賞したことによって、私の仕事は増えるのでしょうか?」と語っている』。“飛躍”などと言えるほど余裕のある状況ではなく、コルトレーンであろうが、誰であろうが、仕事に飢えていた時期なのだ。

1. My Favorite Things
2. When Lights Are Low
3. Impressions
4. Greensleeves
5. Africa

John Coltrane - soprano saxophone, tenor saxophone
Eric Dolphy - alto saxophone, bass clarinet, flute
McCoy Tyner - piano
Reggie Workman - double bass
Art Davis - double bass (track 5)
Elvin Jones - drums

Recorded in August, 1961 at The Village Gate, NYC.
Released on July 14, 2023.

Lee Morgan / The Sixth Sense

CD帯から。「ザ・サイドワインダーから始まったジャズ・ロック路線の最終章。幻のテナーサックス奏者フランク・ミッチェルを擁する3管編成で、多彩なリズムにアプローチ」。確かに、スイングジャーナル1976年4月臨時増刊『世界ジャズ人名辞典』には、ミッチェルの名前はなかった。そして、彼のWikipediaによると、参加アルバムは本作を含めて4枚のみで、「27歳で殺害されるまでアート・ブレイキーやリー・モーガンらと活動した」とある。「幻」が適切とは思わないが、短命で終わったミュージシャンである。

ライナーノーツで藤本史昭氏は、「フランク・ミッチェルを除いて全員がモーガンとの共演歴があり、かつジャズ・メッセンジャーズ経験者」と、2021年6月付けで書いている。これは明らかな間違い。ドラムのビリー・ヒギンスのみが、当然ながらメッセンジャーズの経験なし。

それよりも、CD帯にあるように「ジャズ・ロック路線」と称されることが多いこの時期のリー・モーガン。だが、必ずしも8ビートに執着していたわけではない。ザ・サイドワインダー以降のアルバムでは、参加メンバーが流動的であるものの、ヒギンスだけはほぼ固定。ヒギンスはオールマイティーのドラマー。モーガンはどんな曲想にも対応できるヒギンスがいたからこそ、様々なスタイルにチャレンジできたのだろう。その中の一つがロック調であることが、このアルバムを聴くとよく分かる。

1. The Sixth Sense
2. Short Count
3. Psychedelic
4. Afreaka
5. Anti Climax
6. The Cry Of My People
7. Extemporaneous
8. Mickey's Tune
9. Leebop

Tracks 1 - 6
Lee Morgan - trumpet
Jackie McLean - alto saxophone (tracks 1-5)
Frank Mitchell - tenor saxophone
Cedar Walton - piano
Victor Sproles - bass
Billy Higgins - drums
Recorded on November 10, 1967 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 7 - 9
Lee Morgan - trumpet
Frank Mitchell - tenor saxophone
Harold Mabern - piano
Mickey Bass - bass
Billy Higgins - drums
Recorded on September 13, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Thelonious Monk / Monk In Copenhagen

1961年4月から5月に、モンクはヨーロッパツアーを行った。ジャズのディスコグラフィーを網羅しているJAZZDISCO.orgのモンクのカタログを読むと、このツアーは4月15日のアムステルダムから始まり、5月16日のストックホルムで幕を閉じている。しかし、本作のデンマーク語Wikipediaによると、翌17日にコペンハーゲンでコンサートを行い、デンマーク放送が録音。それから35年経過した1996年、デンマークのレーベルStoryvilleからリリースされた、と記されている。国内盤リリースは2015年。なぜか、JAZZDISCO.orgには未だに掲載されていないアルバム。

このヨーロッパツアーの音源は、複数のアルバムに分散され、しかもマイナーレーベルが多く、国内で容易に入手できるのは、4月21日にミラノで録音したアルバムMonk In Italyと本作のみである。この2枚を続けて聴いた。例えば、Jackie-Ingは前者が4分53秒、後者が9分28秒。Rhythm-A-Ningは5分45秒と8分59秒。つまり、ツアーでライブを重ねる毎に、メンバー間の意思疎通が深まっていったことを示しているのだ。

ところで、ジャケット写ったベーシストは、ツアーに参加したJohn Ore(ジョン・オー)ではなく、Larry Ridley(ラリー・リドレー)と思われる。そして、モンクの顎髭に白髪が目立つので、70年代以降のショットだろう。オーは、93年までモンクと共演している(2014年に他界)。彼にとっては極めて失礼なアルバムで、JAZZDISCO.orgに対して「このアルバムを掲載するな!」とクレームを入れたのかもしれない。

1. Jackie-Ing
2. Crepuscule With Nellie
3. I Mean You
4. Rhythm-A-Ning
5. Epistrophy
6. Body And Soul
7. Well You Needn't
8. 'Round Midnight
9. Off Minor
10. Ba-Lue Boliver Ba-Lues-Are

Charlie Rouse - tenor saxophone (except track 6)
Thelonious Monk - piano
John Ore - bass (except track 6)
Frankie Dunlop - drums (except track 6)

Recorded on May 17, 1961 at Odd Fellow Palæet, Copenhagen, Denmark.