山下洋輔 / Kurdish Dance

1988年に結成したニューヨーク・トリオ。4年後の92年に、ゲストとしてテナーサックスのJoe Lovano(ジョー・ロヴァーノ)を迎え入れた。その理由は、タイトル曲Kurdish Danceにあったのだろう。前のめりのリズムである。このリズムを一度体感してしまうと、病みつきになる。この9拍子の曲をピアノトリオだけで演奏すると、洋輔は自分が酔えないと感じたはずだ。自分が酔えなければ、聴き手を酔わすことなどできない。

かつての山下トリオは、ピアノ、サックス、ドラムという構成だった。曲全体のフォーマットを担うベースを排することで、自由を手に入れようとした。そして、その構成で頂点まで登りつめたトリオを解散。それから約10年後、フォーマット重視のピアノ、ベース、ドラムの形態で新たにスタート。だが、曲によっては自由に遊び回れないことに気付いた。いや、そんなことは初めから承知していたはず。トリオありきでスタートするつもりではなかったニューヨーク・トリオ。いつの間にか、そう呼ばれるようになってしまった。で、このアルバムでは全8曲中の4曲にロヴァーノが参加。2曲はピアノソロという構成でリリース。だが、ジャケットにはNEW YORK TRIOと刻まれている。

1. Kurdish Dance
2. Back Yard
3. ACT 3-8
4. Brooklyn Express
5. Tiny Square
6. Subway Gig
7. 4th Street Up
8. K's Gift

Yosuke Yamashita - piano
Cecil McBee - bass (tracks 1,3-5,7,8)
Pheeroan akLaff - drums (tracks 1,3-5,7,8)
Joe Lovano - tenor saxophone (tracks 1,3,5,7)

Recorded on May 11 & 12, 1992 at Clinton Recording Studios, NYC.

山下洋輔 / Plays Gershwin

山下洋輔の持ち味は、原曲のエッセンスをうまく引き出して、創作料理を作り上げてしまうところにある。日本の童謡を題材にしたときなどは、その腕前を見事に発揮するのだ。ここでの素材はガーシュウィン。洋輔の手癖は随所に出てくるものの、素材に合った料理の仕方。洋輔らしいハチャメチャ感はない。その代わり、何度聴いても飽きがこない仕上がりになっている。

気になるのは、唯一ガーシュウィンの作品でないMy Favorite Thingsを忍び込ませたこと。ところが、この曲が本作の最大の聴き所なのだ。洋輔はガーシュウィンをやりたかったのか、それともMy Favorite Thingsをやりたかったのか。自分が所有する洋輔のアルバムでは、本作以前にこの曲の録音はない。なので、録音チャンスを狙った後者のような気がするのだ。ちなみに、1988年8月録音のアルバムWind Of The Ageで、この曲を再演している。

1. Love Is Here To Stay
2. A Foggy Day
3. My Favorite Things
4. But Not For Me
5. I Love You Porgy
6. It Ain't Necessarily So
7. I Got Rhythm
8. Someone To Watch Over Me
9. Embraceable You

Yosuke Yamashita - piano
Cecil McBee - bass
Pheeroan akLaff - drums

Recorded on May 2 & 3, 1989 at Clinton Recording Studios, NYC.

山下洋輔 / Crescendo

ヨースケのニューヨーク・トリオによるスイート・ベイジルでのライブ。観客はそれなりに盛り上がっている感じなのだが、果たしてヨースケのピアノを真っ正面から受け入れてくれたのかどうかよく分からない。ヨースケ自身も、掲載された書下ろしエッセイで、そのことを多く語っていない。それ以上に、ライナーノーツで野田秀樹が駄文を並べ紙面を汚している。演奏は及第点、野田は落第点である。というか、野田に依頼したプロデューサーが落第。

CD帯のキャッチコピー「山下洋輔ニューヨーク・トリオの記念すべきファーストアルバム。強力なリズムセクションと出会い、マンハッタンを熱狂させた山下ジャズの真髄!」。この文章を書いたヤツはアルバムを聴いているはずがない。どこが「熱狂」なのだろう。そもそも、ヨースケ、セシル、フェローンの3人はファーストアルバムということもあって、まだ発狂していないのだ。互いの手癖を掴み切っていない感じ。

1. Autumn Changes
2. Take The "A" Train
3. Soul Eyes
4. C.P. Blues
5. First Bridge
6. My One And Only Love

山下洋輔 - piano
Cecil McBee - bass
Pheeroan akLaff - drums

Recorded on July 11 & 18, 1988 at Sweet Basil, NYC.