Woody Shaw / Dr. Chi

1985年4月、ウディ・ショウはアルバムWith Tone Jansa Quartet(トーン・ヤンシャ・カルテット)をオランダで録音。翌86年7月、同じメンバーにより、ヤンシャの母国スロベニアで本作を録音。今度はヤンシャ名義になっている。リリースは1989年。

前作に比べて、より一層モーダルな演奏を繰り広げる。その立役者はベースのPeter Herbert(ピーター・ハーバート)。アグレッシブなベースを展開し、まさしく司令塔の存在になっている。フロント2管だけでなく、ベースを中心に聴くと、重量感ある本作を十分に楽しめる。

ところで、ジャケットの手書きによる「趙醫生」は、何を意味しているのだろうか。ライナーノーツやWikipediaでは、そのことには一切触れられていない。「趙」は「チョウ、ジョウ」で、「醫」は「イ、エイ」と読む。「チョウ・エイショウ」という人の名前の気がする。その人の愛称が「ドクター・チ」で、ショウが世話になっていた医者なのかも知れない。ショウは、1989年2月にブルックリンで地下鉄のホームから転落。左腕を切断し、その後の経過が悪く同年5月に死去。本作のリリースが、死去の前なのかは不明だ。

1. Dr. Chi
2. Odra
3. Stroll And Flight
4. Nostalgia
5. Chain
6. Zoltan

Woody Shaw - trumpet, flugelhorn
Tone Jansa - tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Renato Chicco - piano
Peter Herbert - bass
Dragen Gajic - drums

Recorded on July 1986, Radio Ljubljana Musical Center 26, Slovenia.

Woody Shaw / With Tone Jansa Quartet

なぜにウディ・ショウが、オランダでTone Jansa(トーン・ヤンシャ)のグループとの録音に臨んだのか。その答えがCD帯にあった。「ウディ・ショウが1985年のヨーロッパツアーの途中オランダでサックス奏者トーン・ヤンシャと邂逅!」。ところが、ライナーノーツには、こう書かれている。「この当時ウディはタイムレスのプロデューサーのヴァイト氏宅に身を寄せていた。仕事がないというウディに録音の機会を与え、コンサートまでブッキングしたのだからヴァイト夫妻の尽力は相当なものだった」。

CD帯のキャッチコピーは、ライナーノーツのエッセンスをまとめるもの。このアルバムに関しては、真逆の表現なのだ。一期一会の出会いだったのか、それとも日銭を稼ぐセッションだったのか。いずれにしても、仕上がったアルバムは、モーダルで最高の出来となった。ウディのディスコグラフィーを見ると、この85年には、本作しか録音していない。かなり厳しい状況にあったのだろう。だからこそ、気合が入ったアルバムなのだ。

全曲がヤンシャの作品。3曲目のCall Mobilityは、明らかにコルトレーン作Impressionsのスケールを用いている。ヤンシャの詳細な情報は手に入らなかったが、コルトレーンを研究してきたミュージシャンに違いない。ウディは、そんなヤンシャに触発された感じだ。コルトレーン・ファンに勧めたい一枚。

1. Midi
2. Boland
3. Call Mobility
4. River
5. Folk Song
6. May

Woody Shaw - trumpet, flugelhorn
Tone Jansa - tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Renato Chicco - piano
Peter Herbert - bass
Dragen Gajic - drums

Recorded on April 3, 1985 at Studio 44, Monster, Netherlands.

Woody Shaw / Stepping Stones

ビレッジ・バンガードでのウッディ・ショウのライブ演奏。時代は1970年後半を迎え、4ビートジャズが見直されてきた頃。そのきっかけになったのは、1976年6月29日、ニューポート・ジャズ・フェスティバルで「ハービー・ハンコックの追想」というプログラムが組まれ、アルバムV.S.O.P.がリリースされたこと。その2年後、ここでも熱いジャズが繰り広げられた。

新たな息吹を感じさせるアルバム。残念なのは、ショウにとっての定番曲がないこと。アルバムの最初の3曲はショウの作品であるが、印象に残る曲とは言えない。熱いけれど完全燃焼しないアルバム。そして、手抜きとは言わないものの安易なジャケット。

1. Stepping Stone
2. In A Capricornian Way
3. Seventh Avenue
4. All Things Being Equal Are Not
5. Escape Velocity
6. Blues For Ball
7. Theme For Maxine

Woody Shaw - cornet, flugelhorn
Carter Jefferson - tenor saxophone, soprano saxophone
Onaje Allan Gumbs - piano
Clint Houston - bass
Victor Lewis - drums

Recorded on August 5 & 6, 1978 at The Village Vanguard, NYC.