Ted Curson / Urge

エリック・ドルフィーは、1964年6月29日にベルリンで客死。その約1ヶ月後にテッド・カーソンはアルバムTears For Dolphyを録音。前準備は、ほとんどなったはずである。それから2年後、アルバムUrgeの録音に臨んだ。バラード曲You Don't Know What Love Isを除いてカーソンの作品。では、なぜに1曲だけバラードを入れたのか。

ドルフィーの最後のアルバムLast Dateには、このバラードが収録されている。Tears For Dolphyの録音時点で、Last Dateはまだリリースされていなかった。Urge(衝動)というタイトルは、ドルフィーへの追悼の気持ちを改めて表しているのだと思う。それをブッカー・アーヴィンとのフロント2管で取り組んだ。ライナーノーツによると、このバラードを提案したのはアーヴィンとのこと。カーソンの気持ちを察したのだろうか。ちなみに、アーヴィンは、66年9月に自身のアルバムHeavy!!!で、この曲を再演。バラードを除くと、全体的にブルース色が濃い。だが、ドラムが不必要に叩き過ぎていて、ブルージーな雰囲気を崩してしまっているのが残念。なお、本作はCD化されているが、中古が2万円以上の取引で衝動買いはできない。

1. Roy's Boys
2. You Don't Know What Love Is
3. Cinq Quartre
4. Musis Sacrum
5. The Leopard
6. Latino

Ted Curson - trumpet, pocket trumpet
Booker Ervin - tenor saxophone
Jimmy Woods - bass
Edgar Bateman - drums

Recorded on May 13, 1966 at Baarn, Netherlands.

Tommy Flanagan / Flanagan's Shenanigans

1989年に設立されたデンマークのジャズパー賞。その第4回の1993年は、トミー・フラナガンが受賞。それを祝ってのコンサート。ゆえに、和らいだ感じのライブ演奏となっている。フラナガンは、肩に力が入らず見事なパフォーマンスを繰り広げる。ご機嫌な一枚。

タイトル曲Flanagan's ShenanigansはジャズピアニストJames Williams(ジェームス・ウィリアムス)の作品。彼とフラナガンとの接点は見つからなかったが、フラナガンより20歳ほど若く、大先輩として尊敬していたのだろう。shenaniganとは「いたずら」「悪ふざけ」の意味。Flanaganとの語呂合わせ思い付いたウィリアムスの「悪ふざけ」。それをアルバムタイトルにしたのもプロデューサーの「悪ふざけ」。だが、フラナガンは受賞コンサートなので、「悪くないね」とほほ笑んだに違いない。

1. Eclypso
2. Beyond The Bluebird
3. Minor Mishap
4. For Lena And Lennie
5. Flanagan's Shenanigans
6. Balanced Scales
7. But Beautiful
8. Let's
9. Tin Tin Deo

Jesper Thilo - tenor saxophone
Tommy Flanagan - piano
Jesper Lundgaard - bass
Lewis Nash - drums

The Jazzpar Windtet:
Flemming Madsen - bass clarinet, baritone saxophone
Uffe Markussen - bass clarinet, soprano saxophone, tenor saxophone
Jan Zum Vohrde - flute, alto saxophone
Steen Hansen, Vincent Nilsson - horn
Henrik Bolberg Pedersen - trumpet

Recorded on April 2, 1993 at The JAZZPAR Prize concert, SAS Falconer Center, Copenhagen, Denmark.

高田渡 / 貘

さて、高田渡のアルバムであるが、渡だけのアルバムではない。多くのミュージシャンが関わっている。サブタイトルは「詩人・山之口貘をうたう(監修・高田渡)」となっている。そして、CDの帯にはこう書いてある。「ボクは今、やっと山之口貘さんに逢えた様な気がします。ステキな詩は反芻(はんすう)しながら生きていくと思っています」。

この反芻という言い方が、渡らしい。渡の生き方は反芻だったような。決して唄を作り続けるとは思っていなくて、自分の「唄」を探し続けてきた人生ではなかったのか。ライナーノーツには、こうも書かれている。「山之口貘さんの詩に出会ったのは、ボクが十八の頃。一年程本棚の片隅に眠っていた。…気がつくと貘さんのトリコになっていた、いつの間にか歌っていた」。その代表曲が「生活の柄」。渡が最初に録音したのは、1971年のアルバム「ごあいさつ」。それから人生を終えるまで歌い続けてきた。1曲目「年齢」以外は、全て貘の詩。ブックレットには、その原詩が載っている。いわば、このアルバムは貘の詩集とも言えるのだ。

1. 年齢・歯車
2. 結婚
3. 深夜
4. たぬき
5. 座布団
6. 告別式 I
7. 玩具
8. 第一印象
9. 鮪に鰯
10. 頭をかかえる宇宙人
11. 貘
12. 会話
13. 紙の上
14. 告別式 II
15. ものもらい
16. 石
17. 夜景
18. 生活の柄

・ 参加ミュージシャン:高田渡, 大工哲弘, 佐渡山豊, 石垣勝治, 嘉手苅林次, つれれこ社中, 大島保克&オルケスタ・ボレ, ふちがみとふなと, 渋谷毅, 内田勘太郎(from憂歌団), ローリー, 関島岳朗, 中尾勘二, 桜沢有理
・ 録音:1997.12 - 1998.4 国際貿易スタジオ(那覇・泊), ふぉるく(東京・大森), SPACE VELIO(東京・阿佐ヶ谷)
・ 発売:1998年5月23日