Thelonious Monk / Monk In Copenhagen

1961年4月から5月に、モンクはヨーロッパツアーを行った。ジャズのディスコグラフィーを網羅しているJAZZDISCO.orgのモンクのカタログを読むと、このツアーは4月15日のアムステルダムから始まり、5月16日のストックホルムで幕を閉じている。しかし、本作のデンマーク語Wikipediaによると、翌17日にコペンハーゲンでコンサートを行い、デンマーク放送が録音。それから35年経過した1996年、デンマークのレーベルStoryvilleからリリースされた、と記されている。国内盤リリースは2015年。なぜか、JAZZDISCO.orgには未だに掲載されていないアルバム。

このヨーロッパツアーの音源は、複数のアルバムに分散され、しかもマイナーレーベルが多く、国内で容易に入手できるのは、4月21日にミラノで録音したアルバムMonk In Italyと本作のみである。この2枚を続けて聴いた。例えば、Jackie-Ingは前者が4分53秒、後者が9分28秒。Rhythm-A-Ningは5分45秒と8分59秒。つまり、ツアーでライブを重ねる毎に、メンバー間の意思疎通が深まっていったことを示しているのだ。

ところで、ジャケット写ったベーシストは、ツアーに参加したJohn Ore(ジョン・オー)ではなく、Larry Ridley(ラリー・リドレー)と思われる。そして、モンクの顎髭に白髪が目立つので、70年代以降のショットだろう。オーは、93年までモンクと共演している(2014年に他界)。彼にとっては極めて失礼なアルバムで、JAZZDISCO.orgに対して「このアルバムを掲載するな!」とクレームを入れたのかもしれない。

1. Jackie-Ing
2. Crepuscule With Nellie
3. I Mean You
4. Rhythm-A-Ning
5. Epistrophy
6. Body And Soul
7. Well You Needn't
8. 'Round Midnight
9. Off Minor
10. Ba-Lue Boliver Ba-Lues-Are

Charlie Rouse - tenor saxophone (except track 6)
Thelonious Monk - piano
John Ore - bass (except track 6)
Frankie Dunlop - drums (except track 6)

Recorded on May 17, 1961 at Odd Fellow Palæet, Copenhagen, Denmark.

高田渡 / 高田渡読本

音楽出版社 2007年5月25日発行 定価1,905円。高田渡は、56歳で2005年4月16日に他界。その2年後に出版された書籍。タイトルに『読本』とあるように、この1冊で高田渡の全体像に迫れる。渡のアルバムを聴き、さらにこの本を読めば、渡にもう一歩近づけるのだ。

「高田渡がいた場所 ー 吉祥寺を歩く」から始まる。渡と関係の深かった吉祥寺の8ページによる写真。次に「高田渡の詩」を6編掲載。「自衛隊に入ろう」「鉱夫の祈り」「自転車にのって」「ボロ・ボロ」「漣」「いつか」。さらに「バーボン・ストリート・ブルースを読む」へつながり、ここまでがプロローグ的位置づけ。

「高田渡の存在」、「高田渡の歌」、「京都時代の高田渡」の3本が本題。エピローグ的に「追悼文一束」、「寄せ書き 高田渡のこの1曲」、CDガイド、DVDガイド、楽譜集で締めくくっている。楽譜は「夕暮れ」「系図」「ブラザー軒」「生活の柄」「告別式」「結婚」の6曲。

戸井十月 / 道、果てるまで

2011年4月15日発行(新潮社 定価1,600円)。決してジャズとは無関係の本ではない。戸井十月氏とは、短い期間だったが一緒に仕事をさせていただいた。なので、「戸井さん」と呼ばせてもらいたい。戸井さんがユーラシア大陸を横断したのは、2009年7月から11月。この旅の途中で61歳を向かえた。つまり、60歳になって5大陸目の旅の計画を進めていた訳である。戸井さんは、こう書いている。

人は誰も、生から死へ至る途上を生きている。
人生も旅も過程(プロセス)だ。
どこに辿り着いたかではなく、どこに向かっているのかが肝要ではないだろうか・・・。

ポルトガルのロカ岬から120日間かけてウラジオストクに到着した日のことをエピローグに書いている。「その夜、私が敬愛するジャズミュージシャンの坂田明氏から、こんなメールが届いた。〈無事完走おめでとう!人生における素晴らしい快挙に祝福を!!良くやりましたね。チームの皆さんにもおめでとうを送ります。敬服の限りであります。(中略)とにかく拍手、拍手、拍手。終わった時ぐらい、いい気持で誇らしくして下さい。どうせ、後はさりげなく、いつもどおりだから〉」。

2013年8月25日の「戸井十月の新たな旅立ちを見送る会」に参列。生前、戸井さんとは少しだけジャズの話をした記憶がある。戸井さんが坂田明とつながっていることを知っていたら、もっと深い話ができたはずなのに…。