緊張感はあるのだが、曲そのものにポテンシャルを感じない。全編、サム・リバース作。掴みどころのない曲ばかり。例えば、アフロ・ブルー。最初の1小節で、聴き手は身構える。その1小節が軸となって、どういう展開になるのか期待するからだ。残念なことに、このアルバムに収められた曲には、軸となるフレーズがなく、拡散する一方のような印象を与えてしまう。タイトルContours通り、輪郭だけを設定して録音に臨んだのだろうが、主役のリバースがセッションの方向性を導き出していない。メンバーは好き勝手に演奏しているだけ。リバースの統率力のなさを露呈してしまったアルバムなのだ。
ライナーノーツで、マイケル・カスクーナが次のように書いている(行方均氏:訳)。「本アルバムで、サムはハードバップの原点に立ち戻り、新しく挑戦的な楽曲をもってその境界を押し広げている。本セッションのためにサムが集めたのは60年代のベストといえるミュージシャンたちで、彼らの試みがハードバップという言語を拡張していくのだ」。カスクーナが言うように「挑戦的な曲」と捉えることはできるが、「未完成な曲」とも言えるのである。
1. Point Of Many Returns
2. Dance Of The Tripedal
3. Euterpe
4. Mellifluous Cacophony
5. Mellifluous Cacophony [alternate take]
Sam Rivers - tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Freddie Hubbard - trumpet
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Joe Chambers - drums
Recorded on May 21, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.