坂田明 / In a Sentimental Mood

2025年11月7日、坂田明が第82回中国文化賞を受賞した。この「中国文化章」とは、中国新聞社が設けた文化の向上に大きく貢献した中国地方ゆかりの個人、団体に対し、賞を贈ることで業績をたたえ、広く社会に公表することを趣意とした賞。11月8日付け中国新聞に受賞記事が掲載され、その切り抜きがネットに流れた。その記事の中で、坂田の発表アルバムの中から「今聴いて欲しい10枚」を自身が選んでいる。10枚中4枚は所有していたが、未所有の「ひまわり」、最新作の「In a Sentimental Mood」を購入。

ジャケットに大きくある「SOS」とは、坂田明・大森菜々・坂田学(明の長男)の頭文字によるトリオの名称。そして、紙ジャケットの帯には『戦後80年 - 80歳の坂田明が謹んでお届けします。』とある。戦後80年とは言え、未だに世界各地では戦争は絶えない。頭文字の「SOS」なのだが、それとは別に坂田には言いたいことがあるような気がする。

新聞記事の中で、坂田はこうも語っている。「自分の中にあるものしか演奏には出てこない。ただ、これはなんだ、自分のものではないと思う瞬間もある。自分がやっているけれど、自分とは思えないことをしている。精霊のお告げだろうと思う。宇宙と一体になった自分がいるんだ」。長年、音楽活動を共にしてきた山下洋輔は、2026年から演奏活動を一時休止すると発表。山下より3歳年下の坂田は、自分が宇宙と一体と感じる限り演奏を続けるのだろう。

1. In a Sentimental Mood
2. Song of the Birds / 鳥の歌
3. SOS 1st
4. SOS 2nd
5. Itsuki no Komoriuta / 五木の子守唄
6. Hatahata / ハタハタ

坂田明 - saxophone, clarinet, bells
大森菜々 - piano
坂田学 - drums

Recorded on March 8, 2025 at BS & T Studio.

坂田明 / ひまわり

2025年11月7日、坂田明が第82回中国文化賞を受賞した。この「中国文化章」とは、中国新聞社が設けた文化の向上に大きく貢献した中国地方ゆかりの個人、団体に対し、賞を贈ることで業績をたたえ、広く社会に公表することを趣意とした賞。11月8日付け中国新聞に受賞記事が掲載され、その切り抜きがネットに流れた。その記事の中で、坂田の発表アルバムの中から「今聴いて欲しい10枚」を自身が選んでいる。10枚中4枚は所有していたが、未所有の「ひまわり」、最新作の「In a Sentimental Mood」を購入。

このアルバムには、プロデューサーである鎌田實氏(JCF/日本チェルノブイリ連帯基金、医師)の自筆による紹介文が同梱されている。以下に全文を記載。

坂田明さんと昨秋、チェルノブイリを旅した。甲状腺がんや小児白血病と闘っている放射能の汚染地へ今まで約6億円のお薬と80回の医師団を送ってきました。……音楽も届けてあげたかった。坂田明のサックスが、汚染大地の病院にひびいた。「ひまわり」がすごかった。いつになく静かに、時にはうなるように、沈黙の大地を汚したことを怒り、そして静かに祈った。このテイストのアルバムをつくろうと思った。NPOでレーベル「がんばらない」をつくった。京都ブランドの信三郎帆布の一澤信三郎さんがバックをつくりながら応援してくれた。感謝。

優しいとか癒しとかオレはダメと言っていた坂田さんが重い腰をあげてくれました。今、毎月、イラクの四つの小児病院に薬をとどけています。戦争や放射能汚染に傷ついた子どもたちの命を支え環境や平和を守る活動をしているJCF(日本チェルノブイリ連帯基金)やJIM-NET(日本・イラク・メディカルネットワーク)を通して、すべての利益は子どもたちのいのちを支えるために使われます。友だちにCDをもう一枚プレゼントを、口コミやインターネットで感想をつたえてください。お力ぞえを待っています。「がんばらなくていいよ」が口グセの田舎医者ですが、今回は、あきらめないで、いいCDがプロデュースできたと思います。ホッとしています。信州にて。(2006春 鎌田實)

1. ひまわり
2. 見上げてごらん夜の星を
3. ウェディング・マーチ
4. 遠くへ行きたい
5. 死んだ男の残したものは
6. 早春賦
7. 水母
8 [おまけ]. G線上のアリア

坂田明 - alto saxophone, soprano saxophone, clarinet
フェビアン・レザ・パネ - piano
吉野弘志 - bass
ヤヒロトモヒロ- percussion (except track 8)

Recorded on February 7 & 8, 2006.

CD帯には、「このCDの収益金はチェルノブイリとイラクのこどもたちの医療支援に使われます。」とある。

坂田明 / 私説「ミジンコ大全」

昨年に続き、ココファームの収穫祭はオンラインになってしまった。秋空の下、ワインを飲みながら坂田明のライブ演奏を体験するのが、これまで最高の楽しみだった。ライブ配信では、その感動を味わうのは無理がある。なので、坂田のアルバム『海』を聴きながら、著書『ミジンコ大全』を開いて、来年こそはと願うのみ。

2013年1月20日発行 晶文社 定価2,500円。ジャズとは関係ない。著者が坂田明だからと言って、ジャズとは関係ないのだ。なぜなら、『あとがき』で彼はこう書いている。「実は私にはジャズはできない。目指したことはある。だが、できないことに気が付いて久しい」。この文章だけ読むと意味不明なので、『あとがき』全体を読んでもらいたい。生物学・遺伝子学の準専門書なので、眠くなりそうになったら、付属のCD『海』を聴くべき。2,500円が決して高くないと納得するだろう。坂田撮影によるミジンコ図鑑(32ページカラー写真)も本書に含まれている。しかし、このCDはジャズでなくパンクである。そうあとがきに書いてある。そう思う人は誰一人いないだろうが。つまり、坂田の人生がパンクなのだ。以下の本書帯の裏面から引用。

「最初に驚きと感動を覚えたのは、コップの中に入れたミジンコを虫眼鏡で覗いたときでした。ミジンコに焦点を当てると、コップの中は無限の宇宙のように広がりを感じさせます。次に衝撃を受けたのは、生きたミジンコを顕微鏡で覗いたときで、ミジンコの体は透明ですから、鼓動する心臓までが丸見えになるのです。〈命が見えた!〉と、とにかく強い衝撃を受けました」。