Phil Woods / Phil Woods & The Japanese Rhythm Machine

フィル・ウッズと日本人プレイヤーによるライブ。会場は新宿厚生年金会館。ライナーノーツによると、1975年7月16日にウッズは単身で来日し、いくつかのライブで演奏してから、市川秀男、古野光昭、ジョージ大塚のトリオを従えて、28日の盛岡、30日と31日の東京公演に臨んだようだ。従って、そのメンバーによる最終公演が、このライブアルバム。ウッズとトリオとの呼吸が合い、白熱の演奏となった。

演奏順に収録されているかは不明なものの、4曲目のSpeak Lowで頂点に達している。イントロはマイルス作Milestonesを借用。観客の一人が、そのイントロが始まり思わず掛け声。その気持ちはよく分かる。自分も、このアルバムを最初に聴いた時はMilestonesが始まると思った。ところで、ウッズのディスコグラフィーには、このアルバムは記載されていない。それだけではなく、1975年録音のウッズ名義のアルバムは皆無。仕事のなかった年。つまり、単身での来日は出稼ぎだったのだ。

1. Windows
2. Spring Can Really Hang You Up The Most
3. Johnny Hodges
4. Speak Low
5. Doxy

Phil Woods - alto saxophone, soprano saxophone
Hideo Ichikawa / 市川秀男 - piano
Mitsuaki Furuno / 古野光昭 - bass
George Otsuka / ジョージ大塚 - drums

Recorded on July 31, 1975 at Kosei Nenkin Kaikan - 新宿厚生年金会館, Tokyo.

Paul Chambers / Paul Chambers Quintet

ポール・チェンバースが、これだけのメンバーを集めてリーダーアルバムを録音したのは1957年5月19日。このデータは重要である。マイルスがアルバムMiles Aheadを録音したのは、同月の4日間(6, 10, 23, 27日)。そこにはチェンバースが参加。つまり、ギル・エバンスのアレンジに縛られるマイルスとのセッションの合間に、自分がやりたいジャズに取り組んだ訳である。かなり気合いが入っていたに違いない。The Hand of LoveとBeauteousはチェンバースの作品である。

最大の聴きどころは、3曲目の「朝日のごとくさわやかに」。フロントの2管が退いて、ベース・ピアノ・ドラムのトリオ演奏。チェンバースは、原曲のメロディーを忠実にウッドベースで表現している。アドリブで原曲を崩していっても、メロディーだけで魅了できる「力(ちから)」を備えている曲には太刀打ちできないということだろう。ならば、ウッドベースと言う楽器で、その「力」を表現できるかに徹したのではないだろうか。こういう飾らない演じ方に、チェンバースの本質を感じてしまう。だからジャズはやめられない。

1. Minor Run-Down
2. The Hand Of Love
3. Softly, As In A Morning Sunrise
4. Four Strings
5. What's New
6. Beauteous
7. Four Strings [alternate take]

Clifford Jordan - tenor saxophone (tracks 1,2,4-7)
Donald Byrd - trumpet (tracks 1,2,4-7)
Tommy Flanagan - piano
Paul Chambers - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on May 19, 1957 at Rudy Van Gelder Studio in Hackensack, New Jersey.

Paul Desmond / Take Ten

ポール・デスモンドはデイブ・ブルーベック名義のアルバムTime Outで成功した。レーベルはコロンビアで、プロデューサーはテオ・マセロ。それは、明らかに名曲Take Fiveが収録されていたから。その成功にあやかってTake Tenなのである。どちらもデスモンドの作品。これが失敗。このアルバムは、デスモンドとジム・ホールとのコラボレーションがコンセプト。それをRCAレーベルがちゃんと分かっていれば、タイトルもジャケットも違うものになったはず。一番損をしたのはジム・ホール。

録音は、1963年6月5日から25日までの6回(5,10,12,14,19,25日)のセッションによるもので、全て同じスタジオ。かなり贅沢な日程だ。しかも、ベーシストは3人もクレジットされている。プロデューサーはジョージ・アヴァキアン。マセロのTime Out以上に売れるアルバムが彼の使命だったのだろう。そのためには、10回でも録り直す姿勢。だからタイトルはTake Tenなのだ。

1. Take Ten
2. El Prince
3. Alone Together
4. Embarcadero
5. Theme From Black Orpheus
6. Nancy
7. Samba De Orfeu
8. The One I Love Belongs To Somebody Else
9. Out Of Nowhere
10. Embarcadero [alternate take]
11. El Prince [alternate take]

Paul Desmond - alto saxophone
Jim Hall - guitar
Eugene Wright - bass (track 1)
Gene Cherico - bass (tracks 2-8,10,11)
George Duvivier - bass (track 9)
Connie Kay - drums

Recorded on June 5 - 25, 1963 in Webster Hall, NYC.