Lennie Tristano / The New Tristano

レニー・トリスターノによるピアノソロ。キースやモンクを代表とするソロのアプローチとは全く異なる。ベースラインを強調することが多く、スイング?することを試みている。トリスターノ自身はスイングしているかも知れないが、聴き手は熱くなれない。それは、ベースラインにシンコペーションがほとんどないからだ。しかし、それこそがトリスターノの真骨頂とも言える。タイトルをThe New Tristanoとして、定冠詞を置き普遍的なものとしてしまった。その傲慢さもトリスターノ的である。

LPのライナーノーツで栗村政昭氏が、このようなことを書いている。「いずれにしてもこのアルバムは、一時期のジャズ界を震撼させたレニー・トリスターノが、風雪を経たのちに残した一里塚として、繰り返し傾聴さるべき無限の内容を秘めた問題作である」。確かに、本作が録音された1960年代初めにおいては、問題作であったと想像する。だが、結局のところ、その問題は棚上げされたままで、コルトレーンやマイルスを中心として、ジャズは大きなうねりに飲み込まれていった。ジャズは常に変化し、普遍ではないのだ。

1. Becoming
2. C Minor Complex
3. You Don't Know What Love Is
4. Deliberation
5. Scene And Variations - Carol, Tania, Bud
6. Love Lines
7. G Minor Complex

Lennie Tristano - piano

Recorded in 1960 - 1962 at Lennie Tristano's home studio, NYC.

Lennie Tristano / Lennie Tristano

CDの帯から。『独自の理論とともに知的な構築をもつ音楽を創造していったレニー・トリスターノ。そんなトリスターノの究極の探究心が、この1枚のアルバムに凝縮されている。テープ・スピードを変えた上に自身のピアノをかぶせた「ライン・アップ」「東32丁目」。ピアノの多重録音による「レクイエム」と「ターキッシュ・マンボ」。徹底的にコマーシャリズムを排したレニー・トリスターノのひたむきな姿が大きな感動を呼ぶ名盤』。

大半はその通りなのだが、文末の「ひたむきな姿」というのが怪しい。かなり計算して売れるアルバムを狙ったのではないだろうか。トリスターノのジャケットの表情に騙されていないか。邦題を『鬼才トリスターノ』としたのも仕組まれた感じがしてしまう。でも、名盤であることは間違いない。いや、アルバムの後半はライブ演奏を収録しているので迷盤のほうが適切だろう。

1. Line Up
2. Requiem
3. Turkish Mambo
4. East Thirty-Second
5. These Foolish Things
6. You Go To My Head
7. If I Had You
8. Ghost Of A Chance
9. All The Things You Are

Tracks 1 - 4
Lennie Tristano - piano
Peter Ind - bass (tracks 1,4)
Jeff Morton - drums (tracks 1,4)
Recorded in 1954 - 1955 at Lennie Tristano's home studio, NYC.

Tracks 5 - 9
Lee Konitz - alto saxophone
Lennie Tristano - piano
Gene Ramey - bass
Art Taylor - drums
Recorded on June 11, 1955 at The Sing-Song Room, Confucius Restaurant, NYC.