Keith Jarrett / Last Dance

キース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンのデュオ。アルバムJasmineと同日(2007年3月24日と25日)の録音で、Jasmineは3年後10年5月、本作は7年後14年6月のリリース。アルバム化に3年も要したことを不思議に思うが、7年となると呆れてしまう。ECMレーベル、その中心人物であるマンフレート・アイヒャーの行動には不可解な事が多い。ジャズに限らず、あらゆる音楽、すべての芸術は、世に公表して価値判断される。ところが、ECMは世に出すタイミングをときには無視する。いや、敢えて策略的にそうしているとも受け取れる。さらには、ジャケットをあっさりと手抜きするのだ。

出典不明ではあるものの、キースが「前作Jasmineが好きだった人には必ず気に入っていただける作品。僕たち2人が一緒に演奏すると、まるで2人が歌っているようなんだ」と語った情報をネットから得た。その頃、ヘイデンは闘病生活にあり、リリース直後の14年7月11日に76歳で他界。本作はヘイデンの追悼盤ではなく、あくまでもJasmine Vol.2という位置付けになる。それなのに、タイトルをLast Danceとしたのは、キースはヘイデンの死を予期していたのだろう。ちなみに、7曲目Where Can I Go Without Youと9曲目Goodbyeは、Jasmineからの別テイク。やはり、Vol.2である。

1. My Old Flame
2. My Ship
3. 'Round Midnight
4. Dance Of The Infidels
5. It Might As Well Be Spring
6. Everything Happens To Me
7. Where Can I Go Without You
8. Every Time We Say Goodbye
9. Goodbye

Keith Jarrett - piano
Charlie Haden - double-bass

Recorded on March 24 & 25, 2007 at Cavelight Studio (Keith Jarrett's home studio), NJ.

Keith Jarrett / Jasmine

ピアノとベースのデュオ。インタープレイという言葉からは、デュオではないもののビル・エバンスとスコット・ラファロの数々の名演が思い浮かぶが、本作ではさらに一歩進んだ奥深さを感じる。チャーリー・ヘイデンのベースは、決して主役を演じようとしない。あくまでも脇役に徹する姿勢。一方のラファロは、ピアノの隙間に入り込むタイミングを常に計っている。良いか悪いかではなく、どちらもジャズマン、そして役者なのである。

決定的な違いは、数え切れないくらいの場数を踏んできたヘイデンの大局観。インタープレイ、時には演奏相手との一騎打ち。ヘイデンは、キース・ジャレットとどれだけ寄り添えるか、溶け合えるかしか考えていなかったはずだ。そして、キースも同じ気持ち。プロデューサーはマンフレート・アイヒャーとキース自身。溶け合って放たれたのはJasmine(ジャスミン)の香り。

1. For All We Know
2. Where Can I Go Without You
3. No Moon At All
4. One Day I'll Fly Away
5. Intro - I'm Gonna Laugh You Right Out Of My Life
6. Body And Soul
7. Goodbye
8. Don't Ever Leave Me

Keith Jarrett - piano
Charlie Haden - bass

Recorded on March 24 & 25, 2007 at Cavelight Studio, NJ.

Keith Jarrett / UP FOR IT

フランス・アンティーブ・ジャズ・フェスティバルでのライブ演奏。世間では、かなり評判の高いアルバムである。しかし、冷静に聴くと音が前に出ていない。それは録音状態ではなく、覇気をあまり感じないということ。それぞれの曲が、予定通りに終わっていく。曲が始まった瞬間に、終わらせ方を考えている。そんな気がする。ステージに立ったのだから、最高のパフォーマンスを演じなければならない。そのことが先行し、集中度に欠けている。

そんなふうに聴きながら、キース自身のライナーノーツ(翻訳)を読んだ。要約すると。「コンサート当日まで雨が降り続き、その日も雨。ゲイリーは癌治療の大手術を受けたばかり。ジャックは前年のステージで壁板にぶつかるというアクシデント。演奏前のディナーは雨の中。ゲイリーは演奏をやりたくないと言う。それでもステージに上がったら、彼のベースの近くで水漏れ。そして、短時間でのサウンド・チェック」。つまり、最悪の状態でのステージだった。そんな演奏のアルバムなので最高の出来になったはずなのだが、凍るような怖さは、ここにはない。ECMのジャケットも相変わらずの手抜き。

1. If I Were A Bell
2. Butch & Butch
3. My Funny Valentine
4. Scrapple From The Apple
5. Someday My Prince Will Come
6. Two Degrees East, Three Degrees West
7. Autumn Leaves / Up For It

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on July 16, 2002 at Festival De Jazz d' Antibes, Juan Les Pins, France.