Gabor Szabo / The Sorcerer

不思議な感覚である。このアルバムをジャズという意識を持って聴き始めると、軽くかわされてしまう。かわされた音楽がジャズではないかと言うと、やはり、これはジャズなのだ。時にはインド音楽であったり、スパニッシュやタンゴの響きを感じたり、まるで演歌のようなフレーズも出てくる。ガボール・ザボは、そもそもジャズと言う範疇でギターを弾いている訳ではなかった、と思う。周囲がジャズに組み込んだだけ。

ジャズクラブ『ザ・ジャズ・ワークショップ』が場を提供し、インパルスが録音してアルバムにしただけ。それをジャズファンが聴き「これはよし!」と唸った。ある種のハプニングであるが、こういうアルバムに出会えたことは、自分にとってもハプニング。タイトルは「魔術師」の意味。ザボ自身ではなく、プロデューサーのボブ・シールによるものだろう。シールは「トリップした…」と呟いたに違いない。

1. The Beat Goes On
2. Little Boat (O Barquinho)
3. Lou-Ise
4. What Is This Thing Called Love?
5. Space
6. Stronger Than Us
7. Mizrab
8. Comin' Back

Gabor Szabo - guitar
Jimmy Stewart - guitar
Lajos "Louis" Kabok - bass
Marty Morell - drums
Hal Gordon - percussion

Recorded on April 14 & 15, 1967 at The Jazz Workshop in Boston, Massachusetts.

Gabor Szabo / Spellbinder

ギターという楽器は、弾き手によってこうも変わるものかと感心してしまう。ジャズギターの名手はたくさんいるものの、鬼才と呼べるのはガボール・ザボだけではないだろうか。そして、サンタナで慣れ親しんだ曲Gypsy Queenを含め、Spellbinder, Cheetah, Yearningの4曲はザボの作品であって、ギターだけではない才能を示している。

さらには、ボーカルも披露し、ジャケットの絵もザボが描いている。インパルス・レーベルは、ザボに対してかなり自由な裁量権を与えていたことが分かる。驚くことに、ベースはロン・カーター。このアルバムの録音当時、ロンは黄金のマイルスグループに所属。マイルスのアルバム『プラグド・ニッケル』(65年12月録音)と『マイルス・スマイルズ』(66年10月録音)の間に、本アルバムに参加したことになる。もしかすると、マイルスとザボの共演があるかも知れないと調べたが、そのデータは出て来なかった。

1. Spellbinder
2. Witchcraft
3. It Was A Very Good Year
4. Gypsy Queen
5. Bang Bang (My Baby Shot Me Down)
6. Cheetah
7. My Foolish Heart
8. Yearning
9. Autumn Leaves / Speak To Me Of Love

Gabor Szabo - guitar, vocals
Ron Carter - bass
Chico Hamilton - drums
Willie Bobo - percussion
Victor Pantoja - percussion

Recorded on May 6, 1966 at Rudy Van Gelder Studio in Englewood Cliffs, New Jersey.

Gabor Szabo / Gypsy '66

CD帯には「鬼才ガボールと盟友たちが60年代に残した、時代の遥か先をゆくフュージョン・サウンド」とある。いや、どうだろうか。時代の先だなんて結果的な見方でしかなく、フュージョンという言葉さえ後付けである。さらに「ハンガリー出身の鬼才ギタリスト、ガボールがアメリカでの名声を決定づけた歴史的名盤。若き渡辺貞夫のフルート・プレイも味わえる」と付け加えている。いやいや、どうだろうか。歴史的ならば、このアルバムがきっかけでジャズに変革が起きたということだろう。

時代とか歴史ではなく、麻薬的ギターの出現であった。聴きたいけど聴くのが怖いギター。聴き手を決して縛り付けはしない。かといって、解放させてもくれない。ずっと宙に浮いたままだ。そのまま、放り投げられる感じ。タイトルの如く「ジプシー」。今となってはある種の差別用語。誤解を恐れずに言えば、根無し草。ガボールのギターは「浮草」のイメージなのだ。

1. Yesterday
2. The Last One To Be Loved
3. The Echo Of Love
4. Gypsy '66
5. Flea Market
6. Walk On By
7. If I Fell
8. Gypsy Jam
9. I'm All Smiles

Tracks 1, 2 & 3
Gabor Szabo - guitar
Barry Galbraith - guitar
Sadao Watanabe - flute
Gary McFarland - marimba
Al Stinson - bass
Grady Tate - drums
Willie Rodriguez - percussion

Tracks 4 - 9
Gabor Szabo - guitar
Barry Galbraith - guitar
Sam Brown - guitar
Sadao Watanabe - flute
Gary McFarland - marimba
Richard Davis - bass
Grady Tate - drums
Francisco Pozo - percussion

Recorded in November, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.