Charles Mingus / Blues & Roots

ミンガスは自分が理想とするジャズしかやらなかった。それは、どのジャズマンも基本的に同じだろうが、自己表現することにこだわり続けたミンガス。結果、未発表の音源も、ほとんど出てこない。ジャズを通して、ウッドベースと言う楽器を通して、社会と向き合ってきたジャズマン。その姿勢に同調できるミュージシャンを集めてセッションを繰り返してきた。ミンガス・ワークショップと言われたセッションは厳しかったのだろう。

このアルバムでは、フロントに6管。音の厚みを重視したミンガス。「オレのやりたい音楽はブルース、それが根っこなんだ」というタイトル。「(1959年)2月4日に録音するから集まれよ」とメンバーに声を掛けた。ミンガスは当時36歳。すでに9人のプレイヤーを集められる親分だった。不思議なのは、ピアニストを2人(ホレス・パーラン、マル・ウォルドロン)呼んだこと。そして、マルは別テイクがあるものの1曲のみ参加。ミンガスのディスコグラフィーによると、その曲はセッションの最初に録音。マルは別の用事があったのか、それともミンガスから「帰れ!」と言われたのか。

ジャケットのミンガスの表情。録音が終わって、自分の意図するジャズに仕上がったというようにも読み取れる。往年のミンガスに比べれば、かなり頬が痩せていることが分かる。

1. Wednesday Night Prayer Meeting
2. Cryin' Blues
3. Moanin'
4. Tensions
5. My Jelly Roll Soul
6. E's Flat Ah's Flat Too
7. Wednesday Night Prayer Meeting [alternate take]
8. Tensions [alternate take]
9. My Jelly Roll Soul [alternate take]
10. E's Flat Ah's Flat Too [alternate take]

Booker Ervin - tenor saxophone
John Handy - alto saxophone
Jackie McLean - alto saxophone
Pepper Adams - baritone saxophone
Jimmy Knepper - trombone
Willie Dennis - trombone
Horace Parlan - piano (tracks 1-5,7-9)
Mal Waldron - piano (tracks 6,10)
Charles Mingus - bass
Dannie Richmond - drums

Recorded on February 4, 1959 at Atlantic Studios, NYC.

Charles Mingus / Jazz Portraits

1959年1月16日、ニューヨークThe Nonagon Art Galleryでのライブ演奏。このギャラリーを検索すると、本アルバムのジャケットが数多くヒットしたものの、ライブの様子を捉えた写真は見つからなかった。その名の通り九角形の会場だったのだろうか。そして、聴衆は何人ぐらいいたのだろう。拍手から数十人程度かと思うのだが。

このアルバムでは、収録曲全てでミンガスのベースソロを聴くことができる。ミンガスは極めてユニークなソロを展開。地を這うような感覚でもなく、超技巧的なストリングでもない。楽曲の流れを遮るようにベースが入ってきて、観客を唸らせるのではなく、自分自身が自分の演奏に酔ってしまう感じ。グループ全体を支配しながらも、自分を支配できていない。実は、そこにミンガス・ミュージックの面白さがあるのではないだろうか。ミンガス・ミュージックに一番当てはまらなかったのは、ミンガスのベースソロ。これを軸にミンガスを聴くと、ミンガスというミュージシャンが分かってくるような気がする。

1. Nostalgia In Times Square
2. I Can't Get Started
3. No Private Income Blues
4. Alice's Wonderland

John Handy - alto saxophone
Booker Ervin - tenor saxophone (tracks 1-3)
Richard Wyands - piano
Charles Mingus - bass
Dannie Richmond - drums

Recorded on January 16, 1959 at The Nonagon Art Gallery, NYC.

Charles Mingus / Tijuana Moods

邦題は『メキシコの想い出』。発売当時、誰が考えたのだろう。ジャケットからの連想なのか。Tijuana(ティファナ)はメキシコの地方都市。例えば「沖縄の雰囲気」を「日本の想い出」と拡大解釈してしまったタイトル。ただし、ジャケットには小さくThe album Charlie Mingus feels is his best work, in which he and his men re-create an exciting stay in Mexico's wild and controversial border town.(ミンガス自身が最高の作品と感じているこのアルバムは、彼と仲間がメキシコの荒々しく喧しい国境の町で刺激を受けた滞在を再現している)とある。

1957年7月と8月の録音で、それから5年経った62年6月にリリース。LPの裏面には62年付けでミンガスの解説文が載っているが、リリースに時間を要したことは一切書かれていない。何があったのだろう。それよりも、ジャケットではCharlesではなくCharlieと記載されていて、Wikipediaではミンガスの発言を取り上げている。Don't call me Charlie; that's not a man's name, that's a name for a horse.(オレをチャーリーと呼ぶな。それは男の名前でなく馬の名前だぞ)。では、Charlie Parker(チャーリー・パーカー)の名前のことをミンガスはどう思っていたのか。

1. Dizzy Moods
2. Ysabel's Table Dance
3. Tijuana Gift Shop
4. Los Mariachis (The Street Musicians)
5. Flamingo
6. A Colloquial Dream (Scenes In The City)

Curtis Porter (Shafi Hadi) - alto saxophone
Clarence Shaw - trumpet
Jimmy Knepper - trombone
Bill Triglia - piano
Charles Mingus - bass
Dannie Richmond - drums
Frankie Dunlop - percussion
Ysabel Morel - castanets
Lonnie Elder - voices

Recorded on July 18 and August 6, 1957 at RCA Victor's Studio A, NYC.