Bob Dylan / はじまりの日

2010年3月発行 岩崎書店 定価1,600円。ディランの曲Forever Youngを詩人Arthur Binard(アーサー・ビナード)が日本語に訳し、イラストレーターPaul Rogers(ポール・ロジャース)が絵にした。この絵本には、ディランによるこの曲の解説が載っている。

「ぼくはひとりアリゾナ州に行って、そこで息子のことを思いながら〈フォーエバーヤング〉という歌をつくった。べつに作詞作曲をやろうと意気込んだわけじゃなく、自然にうかんできて、そのままできあがった。なるべく感傷的にならないように、ちょっと努力しただけだ」。以下は、ビナードの訳詞とディランの原詩の最初。ディランの作品の中で、自分が最も好きな曲の一つ。

きみが 手をのばせば しあわせに とどきますように
きみのゆめが いつか ほんとうに なりますように
まわりの 人びとと たすけあって いけますように
星空へ のぼる はしごを 見つけますように
毎日が きみの はじまりの日
きょうも あしたも
あたらしい きみの はじまりの日

May God bless and keep you always
May your wishes all come true
May you always do for others
And let others do for you
May you build a ladder to the stars
And climb on every rung
May you stay forever young
Forever young, forever young
May you stay forever young

この絵本の最後には、ロジャースによる一枚一枚の絵の解説が載っている。それを読みながら、繰り返し絵を見るのも楽しい。絵の中には様々な人物が登場する。なんと、セロニアス・モンクまでいるのだ!

中野宏昭 / ジャズはかつてジャズであった

1977年4月25日発行 音楽之友社 定価1600円

この本をいつ購入したか覚えていない。新品で購入したのか古本だったのかも。だが、覚えているのは購入し一気に読み切ったこと。

それは、評論家の視点ではなく、ジャズファンの視点で書かれているので、中野氏の言葉に吸い込まれていったからだ。

中野宏昭(なかの ひろあき)
昭和20年1月 北海道生まれ。
昭和43年 スイングジャーナル社編集部入社。
昭和47年 病気のため同社を退社。フリーのジャズ評論家として独立。
昭和51年3月17日死去。31歳。

ジャズが熱かった時代。中野氏の功績は計り知れないものがある。私の手元にある30年以上経ったこの本は、もうボロボロになりかけているけれど、書かれている言葉はまったく色褪せていない。

戸井十月 / 道、果てるまで

2011年4月15日発行(新潮社 定価1,600円)。決してジャズとは無関係の本ではない。戸井十月氏とは、短い期間だったが一緒に仕事をさせていただいた。なので、「戸井さん」と呼ばせてもらいたい。戸井さんがユーラシア大陸を横断したのは、2009年7月から11月。この旅の途中で61歳を向かえた。つまり、60歳になって5大陸目の旅の計画を進めていた訳である。戸井さんは、こう書いている。

人は誰も、生から死へ至る途上を生きている。
人生も旅も過程(プロセス)だ。
どこに辿り着いたかではなく、どこに向かっているのかが肝要ではないだろうか・・・。

ポルトガルのロカ岬から120日間かけてウラジオストクに到着した日のことをエピローグに書いている。「その夜、私が敬愛するジャズミュージシャンの坂田明氏から、こんなメールが届いた。〈無事完走おめでとう!人生における素晴らしい快挙に祝福を!!良くやりましたね。チームの皆さんにもおめでとうを送ります。敬服の限りであります。(中略)とにかく拍手、拍手、拍手。終わった時ぐらい、いい気持で誇らしくして下さい。どうせ、後はさりげなく、いつもどおりだから〉」。

2013年8月25日の「戸井十月の新たな旅立ちを見送る会」に参列。生前、戸井さんとは少しだけジャズの話をした記憶がある。戸井さんが坂田明とつながっていることを知っていたら、もっと深い話ができたはずなのに…。