Bob Dylan / Real Live

1984年7月のヨーロッパツアーからの音源。このアルバムに選ばれた10曲は、ほとんどが初期のもの。I & IとLicense To Killの2曲のみが、前年に発表されたアルバムInfidelsから。元ローリング・ストーンズのミック・テイラーがリード・ギター。そして、カルロス・サンタナをゲストに迎えているなど、ナツメロとゲストに頼ったライブとも言える。ただし、ミック・テイラーはInfidelsに参加した。

演奏の中身は120%ディラン節。しかも、3曲(悲しきベイブ、ブルーにこんがらがって、北国の少女)は弾き語りである。「今回の企画には満足していないけれど、オレはオレらしく好きにやるよ」というスタンス。だからReal Liveなんだと気が付いた。

1. Highway 61 Revisited
2. Maggie's Farm
3. I & I
4. License To Kill
5. It Ain't Me, Babe
6. Tangled Up In Blue
7. Masters Of War
8. Ballad Of A Thin Man
9. Girl From The North Country
10. Tombstone Blues

Bob Dylan - guitar, harmonica, keyboards, vocals
Colin Allen - drums
Ian McLagan - keyboards
Carlos Santana - guitar on "Tombstone Blues"
Greg Sutton - bass guitar
Mick Taylor - guitar

Tracks 1, 2 & 5 - 8
Recorded on July 7, 1984 at Wembley Stadium, London, UK.

Tracks 3 & 9
Recorded on July 8, 1984 at Slane Castle, Slane, Ireland.

Tracks 4 & 10
Recorded on July 5, 1984 at St James' Park, Newcastle, UK.

Bob Dylan / Infidels

キリスト教三部作の三作目Shot Of Loveの録音から2年後、ディランは1983年4月にアルバムInfidelsのセッションを開始した。infidelとは不信心者、異教徒、異端者という意味。それまでの三作を否定するような挑戦的なタイトルである。全てがディランの作品で、難解な曲が並び、自力での訳詞にはかなり苦労した。その際、1991年のディランへのインタビュー記事をネット上で見つけた。インタビュアーが1曲目のJokermanについて尋ねたところ、ディランは「自分からは過ぎ去ってしまった曲であり、アルバムInfidelsの多くの曲も同じだ」と答えている。しかしながら、このJokermanは2003年11月までに157回も歌っているのだ。

ラストのDon't Fall Apart On Me Tonightで、ようやく純粋なラブソングに辿り着く。「今夜、僕から離れてはだめだ/昨日はただの想い出/明日のことは分からない/僕には君が必要なんだ」と歌い切る。ところが、あの『風と共に去りぬ』のクラーク・ゲーブルが歌詞の中に登場。この意表を突くディランのやり方。だからこそ、本来の「ボブ・ディラン」に立ち戻ったと思えるのである。だが、この曲はライブで一度も歌っていない。インタビュー通り、風と共に過ぎ去ってしまったディラン自身の歌。

1. Jokerman
2. Sweetheart Like You
3. Neighborhood Bully
4. License To Kill
5. Man Of Peace
6. Union Sundown
7. I And I
8. Don't Fall Apart On Me Tonight

Bob Dylan - guitar, harmonica, keyboards, vocals
Alan Clark - keyboards
Sly Dunbar - drums, percussion
Clydie King - vocals on "Union Sundown"
Mark Knopfler - guitar, production
Robbie Shakespeare - bass guitar
Mick Taylor - guitar

Recorded in April - July 1983.

Bob Dylan / Shot Of Love

アルバムSlow Train Coming, Saved, Shot Of Loveはキリスト教三部作、ないしはゴスペル三部作と呼ばれていて、前2作の計18曲のタイトルにはLoveという言葉は出て来ない(いくつかの歌詞の中には、単語loveを見つけることはできるが)。そして、本作のタイトル曲Shot Of Love、5曲目Watered-Down LoveにLoveが登場するが、どちらも素直なラブソングではない。むしろ、2曲目Heart Of Mineが心の葛藤を歌うラブソング。この曲には、神も主もイエスも登場しない。結局のところ、誰かがカテゴライズしてキリスト教三部作などと名付け、盲目的に暗唱されてきたに過ぎないのだ。

あまりも手抜きしたジャケットのイラストから、敬遠されてきたアルバムだろう。だが、ラスト曲Every Grain Of Sandは間違いなく傑作。アルバムTrouble No Moreのライナーノーツには、「William Blake(ウィリアム・ブレイク)の詩集〈Auguries of Innocence ― 無垢の予兆〉の最初の一行To see a World in a grain of sand(一粒の砂の中に世界を見ることができる)からタイトルがつけられたのだろう」とある。たしかに、「無垢の予兆」を読むと、この歌とつながっている。そして、次のフレーズでこの曲は幕を閉じる。ここに、ディラン本来の言葉が蘇っている。

「太古の足音がわたしには聞こえる、まるで海のうねりのような/振り返ってみると、そこには誰かがいることもあるし、自分ひとりしかいない時もある/わたしは人の実体がよくわからないまま宙ぶらりんの状態/落ちてくるすべてのスズメのように、あらゆる砂粒のように」。

1. Shot Of Love
2. Heart Of Mine
3. Property Of Jesus
4. Lenny Bruce
5. Watered-Down Love
6. The Groom's Still Waiting At The Altar
7. Dead Man, Dead Man
8. In The Summertime
9. Trouble
10. Every Grain Of Sand

Bob Dylan - guitar, harmonica, percussion, piano, keyboards, vocals
Carolyn Dennis - vocals, background vocals
Steve Douglas - saxophone
Tim Drummond - bass guitar
Donald "Duck" Dunn - bass guitar
Jim Keltner - drums
Clydie King - vocals, background vocals
Danny "Kootch" Kortchmar - guitar, electric guitar
Regina McCrory - vocals, background vocals
Carl Pickhardt - piano
Madelyn Quebec - vocals, background vocals
Steve Ripley - guitar
William D. "Smitty" Smith - organ
Ringo Starr - drums, tom-tom
Fred Tackett - guitar
Benmont Tench - keyboards
Ronnie Wood - guitar
Monalisa Young - vocals

Recorded in March - May 1981.