Art Farmer / Big Blues

CD帯から。「アート・ファーマーとジム・ホールによる双頭リーダーアルバム。名手2人がリラックスしたムードで贈る円熟のジャズ」。円熟のジャズかぁ。自分の中にはない言葉。円熟してしまったジャズってなんだろう。現状に満足せず、常に前へ突き進むのがジャズだと思う。この二人も、本作の録音を終えた時点で、次の構想に入ったに違いない。

ファーマーのディスコグラフィーを調べると、ホールとのアルバムでの共演は数回ほど実現している。本作の前は、1964年4月録音のアルバムTo Sweden With Loveなので、14年振りの顔合わせ。4曲しか収録されていないが、2日間のセッション。入念なリハーサルを重ねたと想像できる。その理由の一つは、本作での重要な役割を果たしているヴァイブのマイク・マイニエリの参加。ファーマーのフリューゲルホーンを、ギターとヴァイブが見事に味付けをしている。

1. Whisper Not
2. A Child Is Born
3. Big Blues
4. Pavane For A Dead Princess

Art Farmer - flugelhorn
Mike Mainieri - vibraphone
Jim Hall - guitar
Mike Moore - bass
Steve Gadd - drums

Recorded on February 2 & 3, 1978 at Electric Lady Studios, NYC.

Art Farmer / The Summer Knows

四谷のジャズ喫茶『いーぐる』店主・後藤雅洋氏が、著書『ジャズの名演・名盤』でこのアルバムを次のように紹介している。「日本制作盤に〈おもいでの夏〉という奴がある。いかにもというタイトル、サマーハットに写真が一枚載った少女趣味ジャケットとくると、大人はちょっと手を出し難い。しかしこれがそんなに悪くないのだ。内容はジャケットのイメージ通りかなり甘いのだけど、それが嫌味になっていない」。

それならばと思い、廉価盤が出たので購入。ファーマーのフリューゲルホーンを十分に楽しめるアルバムである。ただ、全6曲がアルバムコンセプト通りの仕上がりなので、ハッとする場面には出会えない。プロデューサーは、日本人の伊藤潔氏と伊藤八十八氏。夏は冒険しないと…。

1. The Summer Knows
2. Manha De Carnaval
3. Alfie
4. When I Fall In Love
5. Ditty
6. I Should Care

Art Farmer - flugelhorn
Cedar Walton - piano
Sam Jones - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on May 12 & 13, 1976 at Vanguard Studios, NYC.

Art Farmer / To Duke With Love

イースト・ウィンド・レーベル設立40周年記念。2015年2月に生産限定盤で再リリースされたCD。限定であったにもかかわらず、一年半経ってもアマゾンで新品を購入できた。マーケティングに失敗したということよりも、音楽はCDやレコードといった媒体で購入するのではなく、ダウンロードする時代になったということだろうか。そして、7年経った今でも新品が流通している。ジャズのポテンシャルの問題と捉えた方がよさそうだ。

本作は、1974年5月24日に他界したデューク・エリントンの追悼盤。いかにも日本人の企画である。CD帯にはこう書かれている。「まろやかな音色を持つ人気トランペッターが、シダー・ウォルトン・トリオと共に、録音の前年に亡くなったデューク・エリントンを偲んで録音した追悼作。〈スイングしなけりゃ意味がない〉をはじめ、エリントンの代表曲を収録」。これは間違いではないが、アート・ファーマーは全曲フリューゲルホーンを吹いているのだ。

1. In A Sentimental Mood
2. It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing)
3. The Star Crossed Lovers
4. The Brown Skin Gal In The Calico Gown
5. Lush Life
6. Love You Madly

Art Farmer - flugelhorn
Cedar Walton - piano
Sam Jones - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on March 5, 1975 at Blue Rock Studio, NYC.