Ahmad Jamal / The Awakening

CD帯には「マイルス・デイビスに多大なインスピレーションを与えた、ジャズピアノのカリスマ」とある。マイルスがジャマルのピアノに惚れ込んだのは事実。だけど、カリスマという表現には疑問。そもそも、ジャズの世界で「カリスマ」なるレッテルはまず用いない。マイルス自叙伝①で、マイルスは「音楽に空間を息づかせるというアーマッド・ジャマルのコンセプト」と評し、次のように語っている。

「アーマッドがオレに大きな影響を与えたことは事実だ。だが、オレはアーマッドを聴くずっと前から、こんなフィーリングを好み、自分で演奏していたんだ、それを忘れないで欲しい。アーマッドは、オレがずっとやっていた音楽に、改めて目を向けさせてくれたんだ。まあオレを、オレ自身に連れ戻してくれたってわけだ」。アーマッドのピアノの特徴は「間」にあると評されることが多いが、それだけでは不十分な気がする。むしろ「語り」ではないだろうか。しかも、自分への「語り」ではなく、聴き手への「語り」。

1. The Awakening
2. I Love Music
3. Patterns
4. Dolphin Dance
5. You're My Everything
6. Stolen Moments
7. Wave

Ahmad Jamal - piano
Jamil Nasser - bass
Frank Gant - drums

Recorded on February 2 & 3, 1970 at Plaza Sound Studios, NYC.

Ahmad Jamal / But Not For Me

何の変哲もないピアノトリオ。ベースソロもドラムソロもない。4バースのやり取りも無い。リズムを倍速にするなどの工夫も一切ない。トリオのそれぞれが特筆すべきテクニックを持っている訳でもない。アーマッド・ジャマルのシングルトーンが随所に繰り返されるだけだ。だが、このライブで展開される音楽、ジャズは聴き手の心をいつの間にか掴んで離さない。

本アルバムを繰り返し聴いて、その理由がわかったような気がした。ジャマルは自分が納得いくプレイなどはどうでもよいのだ。リスナーがどれだけ心地よくなるかを意識してピアノを弾いている。例えば、インタープレイ。いわば、ミュージシャン同士の会話。ジャマルにはそれは無関係。そこで、「大衆ジャズの総本山」と位置付けたい。一番の聴きどころはPoinciana(ポインシアナ)。かなりシビレルのだ。

1. But Not For Me
2. The Surrey With The Fringe On Top
3. Moonlight In Vermont
4. (Put Another Nickel In) Music, Music, Music
5. No Greater Love
6. Poinciana
7. Woody'n You
8. What's New?

Ahmad Jamal - piano
Israel Crosby - bass
Vernel Fournier - drums

Recorded on January 16, 1958 at The Pershing Lounge of Chicago's Pershing Hotel.

Ahmad Jamal / The Ahmad Jamal Trio

正確な録音データが見つからない。ギターはRay Crawford(レイ・クロフォード)だが、ベースはIsrael Crosby(イスラエル・クロスビー)一人ではなく、2曲はEddie Calhoun(エディ・カルホーン)に交代している模様。それはよしとして、ドラムレスのトリオとして評価されるアルバムではあるが、明らかに打楽器(ボンゴ?)が加わっている。クロフォードがギターと打楽器を持ち替えているのだろうか。全10曲中の7曲は打楽器の音が入る。ドラムレスではあるもの打楽器レスではないアルバム。さらに、3曲目のRica Pulpaには、ギターをバックにマラカスのような音も遠くに聴こえる。

アーマッド・ジャマルとしては、ドラムは省いたものの効果的な味付けとして打楽器を使おうとした訳である。それを見事に表現できたのが4曲目の「枯葉」。キャノンボール・アダレイ名義のアルバムSomethin' Elseで演じたマイルスの枯葉は、ジャマルのこの演奏がヒントになっていることで有名。

1. Perfidia
2. Love For Sale
3. Rica Pulpa
4. Autumn Leaves
5. Squeeze Me
6. Something To Remember You By
7. Black Beauty
8. The Donkey Serenade
9. Don't Blame Me
10. They Can't Take That Away From Me

Ahmad Jamal - piano
Ray Crawford - guitar
Israel Crosby - bass (tracks 2,4-10)
Eddie Calhoun - bass (tracks 1,3)

Recorded on October 25, 1955 at Columbia 30th Street Studio, NYC.