Bill Evans / The Paris Concert Edition One

ベースのマーク・ジョンソン、ドラムのジョー・ラバーバラによるビル・エバンスの最後のトリオ。1979年11月のパリでのこのライブ演奏から約1年後、80年9月15日にエバンスは他界した。しかし、死の直前までライブ演奏を行っていたので、本作から死のイメージは一切なく、むしろ力強ささえ感じる。エバンスは観客の前で演奏できることが喜びだったのだろう。

問題はベースとドラムで、自分たちの力量をみせようとして張り切り過ぎ。特に8曲目のBeautiful Loveにおけるドラムソロは、うるさくて仕方ない。そんなことはエバンスも分かっていたようで、6曲目と7曲目はドラム抜きである。本作がライブの曲順どおりに収録されているならば、ドラマーはじっと待たされていたことになる。だからこそ、8曲目でうっぷんを晴らしたかったのだろうか。いずれにしても、トリオでのインタープレイを味わうアルバムではない。むしろ、観客から割れんばかりの拍手が起きるのが、妙に不自然。ちなみに、本作はエバンスの死後、83年にリリース。

1. I Do It For Your Love
2. Quiet Now
3. Noelle's Theme
4. My Romance
5. I Loves You Porgy
6. Up With The Lark
7. All Mine (Minha)
8. Beautiful Love
9. Excerpts Of A Conversation Between Bill And Harry Evans

Bill Evans - piano
Marc Johnson - bass (except track 3)
Joe LaBarbera - drums (except track 3,6,7)

Recorded on November 26, 1979 at L'Espace Cardin, Paris.

Bill Evans / New Conversations

邦題は『未知との対話 ‐ 独自・対話・そして鼎談』。そもそも「鼎談」を「ていだん」と読めるジャズファン、もしくはエバンスファンは何人いるのだろうか。仮に読めたとしても、「三人での会話」という意味を知っている人は、その何パーセントなのか。ましてや、このアルバムが何故に「三人」なのかはもうppmの世界だろう。この血迷った邦題を付けたレコード会社の担当者は、売ることよりも自己満足に重点を置いたとしか思えない。

血迷ったのはエバンスも同じ。聴き手に何かを伝えることより、多重録音で、しかもフェンダー・ローズを持ち込んでの単なるお遊びである。ところで、ジャケットをそれっぽく仕上げているが、正面と横顔の二人のエバンスは会話をしていない。NewではなくNo Conversationといった感じだ。エバンスが1980年9月に他界する2年半前の録音。死をわずかに予感し遺書的なものを創り上げたかったのだろうか。ところで、オルガンまでも持ち込めば、四つの鍵盤での会話となり、邦題には「さらには会談」と付け加えたに違いない。

1. Song For Helen
2. Nobody Else But Me
3. Maxine
4. For Nenette
5. I Love My Wife
6. Remembering The Rain
7. After You
8. Reflections In D

Bill Evans - piano, keyboards

Recorded in January 26 - February 16, 1978.

Bill Evans / You Must Believe In Spring

1977年8月に録音されたこのアルバムは、エバンス死後の1981年にリリースされている。何があったのだろう。レーベルとの契約の問題か。このアルバムまでレーベルはファンタジー、そしてワーナーに移籍後の第一作であったはず。しかし、翌78年初めに録音されたピアノソロ、オーバーダビングによるアルバムNew Conversationsが、移籍第1弾となった。つまり、ワーナーとしては新たなエバンス像を創りたかったのだろう。そのため、従来路線のYou Must Believe In Springをお蔵入りさせたのだが、演奏内容は非常に高かったため、エバンスの死後にリリース。そう推測したい。

CD帯から。「ビル・エバンスが70年代の後半にたどり着いた至高のトリオ表現。繊細なニュアンスと内省的な響きをもつエバンスのタッチが、これまで以上の深化をみせて聴き手の心に訴えかけてくる。ミシェル・ルグランの手になるタイトル曲。美しくも哀しい〈Bマイナー・ワルツ〉やジミー・ロウルズの名作〈ピーコックス〉をはじめ、ガラス細工のようにデリケートなプレイの美しさに時を忘れて聴き惚れる。ビル・エバンスの“特別な”1枚」。ガラス細工かどうかは別として、時にエディ・ゴメスがはしゃぎ過ぎて、ガラスが割れそうだ。

1. B Minor Waltz
2. You Must Believe In Spring
3. Gary's Theme
4. We Will Meet Again (For Harry)
5. The Peacocks
6. Sometime Ago
7. Theme from M*A*S*H (Suicide Is Painless)
8. Without A Song
9. Freddie Freeloader
10. All Of You

Bill Evans - piano
Eddie Gomez - bass
Eliot Zigmund - drums

Recorded on August 23, 24 & 25, 1977 at Capitol Studios, Los Angeles, CA.