富樫雅彦 / Spiritual Moments

1983年9月、増上寺ホールでの富樫雅彦とスティーヴ・レイシーのデュオを聴きに行ったことがある。演奏する彼らの周りに椅子が並べられて、一つの音楽空間を共有するちょっと不思議な体験だった。コンサート会場やライブハウスとは違う形式の演奏会。非常に緊張感があり、集中し過ぎたせいか疲れたなぁというのが本音だった。

このアルバムでは、富樫とレイシーにケント・カーターのベースが加わることで、緊張感に開放感がプラスされている。つまり、曲の道筋が予感できることで安心感があり、肩に力が入らずゆったりと聴けるのである。しかし、3者のインプロビゼーションは、聴く者を凍らせるほどの緻密さが潜んでいる。

レコーディングに立ち会ったベーシストの翠川敬基の解説から抜粋。「今こうしてアルバムになったものを再び聴き返してみても、その熱い雰囲気が甦ってくる。それどころか、一つの音のカケラさえもおろそかにしない彼等の演奏ゆえに、一曲一曲のニュアンスや音の密度といったものが新たな空間を構築して凄まじい呪縛力で聴くものをとらえるのだ」。

1. It's Freedom Life
2. The Window
3. Poem In The Shadow
4. Steps
5. The Crust

Steve Lacy - soprano saxophone
Kent Carter - bass
Masahiko Togashi / 富樫雅彦 - percussions

Recorded on October 15 & 16, 1981 at King Records Studio No.2, Tokyo.

John Coltrane / Offering

1966年11月11日にフィラデルフィアのテンプル大学で行われたコンサートの音源が発掘され、2014年9月にリリースされたアルバム。比較的安価な輸入盤2枚組CDを購入した。今回、改めて聴き直し、英文Wikipediaで調べたところ、興味深い点をいくつか見つけた。

2人のアルトサックスと3人のパーカッションは、それぞれ地元の学生と地元ミュージシャンで、コルトレーンが声を掛けたそうだ。ラジオ放送されることが前提のコンサートであったにもかかわらず、飛び入り参加に対しては、他のメンバーに不満があったではないだろうか。

そして、ジミー・ギャリソンではなく、ソニー・ジョンソンがベースを弾いていること。ギャリソンは、ハンプトン・ホーズのトリオに参加するためグループを離れると発言したそうだ。この点に関しては、コルトレーン自身に不満があったはずだ。だが、ホーズのディスコグラフィーには、このコンサートの時期のギャリソンとの録音は記載されていない。結局、67年2月録音のアルバムStellar Regionsにギャリソンは参加しているので、一時的に離れただけだったようだ。

さらに、本作ではコルトレーンのボーカルがクレジットされている。LeoとMy Favorite Thingsでコルトレーンは歌っているのだ。というか、雄叫びなのだが…。そして、コルトレーンのディスコグラフィーで、コルトレーンによるボーカルと明確に書かれているのは、本作のみ。雄叫びのコルトレーンの映像を観てみたい。

Disc 1
1. Naima
2. Crescent

Disc 2
1. Leo
2. Offering
3. My Favorite Things

John Coltrane - soprano saxophone, tenor saxophones, flute, vocals
Pharoah Sanders - tenor saxophone, piccolo
Arnold Joyner - alto saxophone
Steve Knoblauch - alto saxophone
Alice Coltrane - piano
Sonny Johnson - bass
Rashied Ali - drums
Umar Ali - percussion
Algie DeWitt - percussion
Robert Kenyatta - percussion

Recorded on November 11, 1966 at Mitten Hall, Temple University, Philadelphia.

Art Pepper / Living Legend

CD帯から。「表題の〈生ける伝説〉とはペッパー自身を指す。75年、長期間の沈黙からの脱出を遂に実現した復帰第一作。さびつくことのなかったアルトが、豊かにスムーズに鳴り響く」。ここでの長期間とは15年を指す。そして、脱出とは麻薬療養を意味する。つまり、1960年にリーダーアルバムを録音して、その後ある程度の音楽活動はしていたものの、15年振りに吹き込んだのが、このアルバム。

なので、タイトルは『生ける伝説』となった。そのイメージでアルバムは展開していく。バックのハンプトン・ホーズ、チャーリー・ヘインデン、シェリー・マンがペッパーを支える。ところが、ハンプトン・ホーズがエレキピアノも弾いてしまったことで、伝説が少し軽くなってしまった。70年代半ばと言う時代に迎合する必要はなかったはずなのに。

1. Ophelia
2. Here's That Rainy Day
3. What Laurie Likes
4. Mr. Yohe
5. Lost Life
6. Samba Mom-Mom
7. Samba Mom-Mom [alternate take]

Art Pepper - alto saxophone
Hampton Hawes - piano, electric piano
Charlie Haden - bass
Shelly Manne - drums

Recorded on August 9, 1975 in Los Angeles, CA.