Woody Shaw / With Tone Jansa Quartet

なぜにウディ・ショウが、オランダでTone Jansa(トーン・ヤンシャ)のグループとの録音に臨んだのか。その答えがCD帯にあった。「ウディ・ショウが1985年のヨーロッパツアーの途中オランダでサックス奏者トーン・ヤンシャと邂逅!」。ところが、ライナーノーツには、こう書かれている。「この当時ウディはタイムレスのプロデューサーのヴァイト氏宅に身を寄せていた。仕事がないというウディに録音の機会を与え、コンサートまでブッキングしたのだからヴァイト夫妻の尽力は相当なものだった」。

CD帯のキャッチコピーは、ライナーノーツのエッセンスをまとめるもの。このアルバムに関しては、真逆の表現なのだ。一期一会の出会いだったのか、それとも日銭を稼ぐセッションだったのか。いずれにしても、仕上がったアルバムは、モーダルで最高の出来となった。ウディのディスコグラフィーを見ると、この85年には、本作しか録音していない。かなり厳しい状況にあったのだろう。だからこそ、気合が入ったアルバムなのだ。

全曲がヤンシャの作品。3曲目のCall Mobilityは、明らかにコルトレーン作Impressionsのスケールを用いている。ヤンシャの詳細な情報は手に入らなかったが、コルトレーンを研究してきたミュージシャンに違いない。ウディは、そんなヤンシャに触発された感じだ。コルトレーン・ファンに勧めたい一枚。

1. Midi
2. Boland
3. Call Mobility
4. River
5. Folk Song
6. May

Woody Shaw - trumpet, flugelhorn
Tone Jansa - tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Renato Chicco - piano
Peter Herbert - bass
Dragen Gajic - drums

Recorded on April 3, 1985 at Studio 44, Monster, Netherlands.

渡辺文男 / All Of Us

CD帯には「大人限定! 大人のジャズファンになりたければ、文男チャンを聴きな。シンプルなレギュラー・トリオでこそ浮彫りになる絶妙なグルーヴ感」とある。一言付け加えるならば、「文男チャンを生で聴きな」としたい。生で聴いて、さらにアルバムを聴くのが、大人のジャズの聴き方。チンさんこと鈴木良雄さんが8曲目のみに参加。ピアノトリオ+セロという構成が、このアルバムの中で、面白い味を出している。

文男さんのライブは、町田Nica'sで何度も聴いてきた。12月29日、文男さんのバースデーライブが年末の楽しみ。しかし、コロナの影響で自分は2年間自粛。今年こそはと願っている。写真は、2019年の81歳を迎えたライブ。左から、鈴木良雄、増尾好秋、峰厚介、渡辺文男、山本剛。なんと、ニューヨーク在住の増尾好秋が帰国して特別参加したのだ。

1. Ah Leu Cha
2. All Of Us
3. 'Round Midnight
4. Ye Headeadeadee
5. Oleo
6. The Other Part Of Town
7. Bitty Ditty
8. This Could Be The Start Of Something Big
9. Beautiful Adela

吉田桂一 - piano
佐々木悌二 - bass (except track 8), cello (track 8)
鈴木良雄 - bass (track 8)
渡辺文男 - drums

Recorded on December 1 & 2, 2007 at King Sekiguchidai 2nd, Studio, Tokyo, Japan.

Wayne Shorter / Phantom Navigator

1986年録音。詳しい日付までは明らかにされていない。だが、楽器編成は事細かに記載されている。その中に、programmingという言葉が出てくる。いわゆる「打ち込み」である。ウェイン・ショーターが、ウェザー・リポート後にやりたかった音楽がここにある。しかし、このスタイルは長続きしなかったようだ。時代を象徴するアルバムであるが、時代を作ることはできなかった。

Phantom Navigator(幻影航行者)。チック・コリアが1曲だけ参加。スタジオに入ったら、シンセサイザーやコンピュータだらけで、呆れたのではないだろうか。つまり、1曲だけで逃げ出した。そのままナビゲートされなくて良かったとも思える。このアルバムを自分が聴くのは3回目。ショーターの幻影に付き合っている暇はないのだ。

1. Condition Red
2. Mahogany Bird
3. Remote Control
4. Yamanja
5. Forbidden, Plan-It!
6. Flagships

Wayne Shorter - tenor saxophone, soprano saxophone, lyricon, vocals
Chick Corea - piano
Jeff Bova - synthesizer
Jim Beard - synthesizer
Mitchel Forman - synthesizer
Stu Goldberg - synthesizer, electric piano
John Patitucci - bass
Alphonso Johnson - bass
Gary Willis - electric bass
Tom Brechtlein - drums
Jimmy Bralower - drums, percussion programming
Bill Summers - percussion, drum programming
Scott Roberts - percussion, drum programming
Ana Maria Shorter - vocals
Gregor Goldberg - vocals

Recorded in 1986 in Los Angeles, CA.