Thelonious Monk / Something In Blue

1984年1月付けの今井正弘氏によるライナーノーツから抜粋。「本アルバムは、1969年に倒れて以来、再三にわたり肉体的コンディションを壊し、ファンを心配させていたモンクが、71年にジョージ・ウェインの発案で《ジャイアンツ・オブ・ジャズ》なるヨーロッパへの巡業企画に参加し、ロンドンへ立ち寄った際にブラック・ライオンのプロデューサーであるアラン・ベイツが録音したものである。〈中略〉ツアーに同行したアート・ブレイキーも参加。モンクとブレイキーの共演盤というのは実に15年振りのことなのであった」。

15年前の共演というのは、57年6月録音のアルバムThelonious Monk With John Coltraneを指していて、正確には14年5ヶ月振り。そんな細かい事より、本作はモンク名義としてのラストアルバムとなってしまったことが重要。

モンクは1982年2月17日に他界。このレコーディングから10年以上の間、病に苦しんだらしい。そういうことを知って聴くと、納得してしまう部分がある。音数(オトカズ)が多いのだ。そんなに頻繁に鍵盤を叩く必要がないのに、隙間なくピアノから音が出ている。緊張感のあるシングルトーンも少なく、不協和音も多く聴かれない。だからと言って、決してモンクらしくないアルバムではないのだが、驚きを感じさせてはくれない。

1. Blue Sphere
2. Hackensack
3. Nice Work If You Can Get It
4. Criss Cross
5. Something In Blue
6. Evidence
7. Jackie-Ing
8. Nutty

Thelonious Monk - piano
Al McKibbon - bass (tracks 2,4,6,8)
Art Blakey - drums (tracks 2,4,6,8)

Recorded on November 15, 1971 at Chappell Studios, London.

Thelonious Monk / Palo Alto

CD帯から。「キング牧師が暗殺され、全米が人種差別に揺れていた1968年10月。ジャズを通して人々の結束を願う一人の男子高校生の想いに応えたモンクは、当時のレギュラー・カルテットを率いて学内コンサートに参加。〈ブルー・モンク〉、〈エピストロフィー〉などの代表曲が演奏されると会場は感動の熱気に包まれた。ライブハウスやラウンジではなく、高校の校舎で行なわれた前代未聞のライブ音源が軌跡の発掘!」。

国内盤を購入して正解だった。このコンサートの詳しい経緯を解説した翻訳が付いていた。コンサート会場はパルアルト・ハイスクールの体育館。当日は雨。モンクはほんとうにやって来るのか。疑いを持つ人が、チケットは買わずに体育館周辺に雨にもかかわらず溢れた。モンクのカルテットを乗せた車が駐車場に到着。車の窓から飛び出たウッドベースのヘッドの部分を見て、彼等はチケットの売り場に直行。コンサートは大盛況。高校の黒人用務員が、ピアノをチューニングするので、代わりに録音させてくれと申し出ていた。その音源が発掘され、2020年9月、コンサートから52年経ち世に出された。さらに、CDには当時のポスターのコピーまで同梱。このコンサートを企画した高校生Danny Scher(ダニー・シャー)、そしてピアノの調律ができた用務員(名前不明)に大感謝。

1. Ruby, My Dear
2. Well, You Needn't
3. Don't Blame Me
4. Blue Monk
5. Epistrophy
6. I Love You Sweetheart of All My Dreams

Charlie Rouse - tenor saxophone (except tracks 3,6)
Thelonious Monk - piano
Larry Gales - bass (except tracks 3,6)
Ben Riley - drums (except tracks 3,6)

Recorded on October 27, 1968 concert at Palo Alto High School, CA.
Released on September, 18, 2020.

Thelonious Monk / Underground

1967年12月から68年2月までの3つのセッションによるアルバム。なぜにタイトルをUndergroundとし、それに合わせたジャケットとしたのだろうか。Wikipediaには、ジャケットについて次のように書かれている。Its cover image depicts Monk as a French Resistance fighter in the Second World War. It won the Grammy Award for Best Album Cover.(第二次世界大戦におけるフランスのレジスタンス運動家としてのモンクを描いている。グラミー賞の最優秀アルバムカバー賞を受賞)。

本作の録音スタジオは明らかになっていないが、アメリカ国内だろう。最初のセッションの1か月前、67年11月にモンクはパリでのライブアルバムを残している。恐らく、その公演で何かのヒントを得たのではないか。そして、ボブ・ディランが1975年7月にリリースしたアルバムBasement Tapesは、本作のジャケットと酷似。ディランがパクったことになるが、モンクとディランの接点はみつかっていない。そして、ボーカリストのジョン・ヘンドリックスが1曲のみに参加。モンクのディスコグラフィーによると、ヘンドリックスとの共演はこの曲のみ。これもUnderground(前衛的)な取り組みだった。

追記:「モンクとディランの接点はみつかっていない」と書いたが、『ボブ・ディラン自伝』の116ページに次の接点を見つけた。

『モンクはときどき午後の時間にブルーノートにひとりで出演し、アイヴォリー・ジョー・ハンターのような音のピアノを弾いた ― 食べかけのサンドイッチがピアノの上に置いてあった。わたしは一度、午後の時間にモンクを聴きに行き、近くの店でフォークミュージックを歌っていると話したことがある。モンクは「わたしたちはみんな、フォークミュージックをやっているのさ」と答えた。休んでいるときも、モンクは独自の活力あふれる宇宙にいた。そういうときでさえ、魔法の闇を呼び起こした』。

1. Thelonious
2. Ugly Beauty
3. Raise Four
4. Boo Boo's Birthday
5. Easy Street
6. Green Chimneys
7. In Walked Bud
8. Ugly Beauty [take 4]
9. Boo Boo's Birthday [take 2]
10. Thelonious [take 3]

Charlie Rouse - tenor saxophone
Thelonious Monk - piano
Larry Gales - bass
Ben Riley - drums
Jon Hendricks - vocals (track 7)

Tracks 1, 3, 5, 7 & 10
Recorded on February 14, 1968.

Tracks 2, 6 & 8
Recorded on December 14, 1967.

Tracks 4 & 9
Recorded on December 21, 1967.