Paul Desmond / Take Ten

ポール・デスモンドはデイブ・ブルーベック名義のアルバムTime Outで成功した。レーベルはコロンビアで、プロデューサーはテオ・マセロ。それは、明らかに名曲Take Fiveが収録されていたから。その成功にあやかってTake Tenなのである。どちらもデスモンドの作品。これが失敗。このアルバムは、デスモンドとジム・ホールとのコラボレーションがコンセプト。それをRCAレーベルがちゃんと分かっていれば、タイトルもジャケットも違うものになったはず。一番損をしたのはジム・ホール。

録音は、1963年6月5日から25日までの6回(5,10,12,14,19,25日)のセッションによるもので、全て同じスタジオ。かなり贅沢な日程だ。しかも、ベーシストは3人もクレジットされている。プロデューサーはジョージ・アヴァキアン。マセロのTime Out以上に売れるアルバムが彼の使命だったのだろう。そのためには、10回でも録り直す姿勢。だからタイトルはTake Tenなのだ。

1. Take Ten
2. El Prince
3. Alone Together
4. Embarcadero
5. Theme From Black Orpheus
6. Nancy
7. Samba De Orfeu
8. The One I Love Belongs To Somebody Else
9. Out Of Nowhere
10. Embarcadero [alternate take]
11. El Prince [alternate take]

Paul Desmond - alto saxophone
Jim Hall - guitar
Eugene Wright - bass (track 1)
Gene Cherico - bass (tracks 2-8,10,11)
George Duvivier - bass (track 9)
Connie Kay - drums

Recorded on June 5 - 25, 1963 in Webster Hall, NYC.

Paul Desmond / First Place Again

CDジャケット裏(非常に小さい英字)を読めば、アルバムタイトルFirst Place Againの理由が分かる。1958年、59年と連続してPlayboy Readers' Pollと記載されている。2年連続、プレイボーイ誌による読者投票のアルトサックス部門でトップとなったことで制作されたアルバム。いまさら異を唱えても仕方がないが、その時期のアルトと言えば、キャノンボール・アダレイがSomethin' Else、オーネット・コールマンがSomething Else!!!!をリリース。どちらのタイトルも現状を突き破ろうとしていた訳である。

一方のブレイボーイ読者は意外にも保守的であった。潜在的な人種差別があったのではないかと勘繰ってしまう。そして、ジャケット。以前は、よくもこれだけの人を集めて人文字を作ったものだと感心していた。ところが、よく見ればトリックであることが判明。タイトルの黒、ポール・デスモンドのオレンジが全く同じ色。屋外の撮影なので、人々が手にしたボードは角度によって色合いが変わるはず。明らかに上塗りした写真である。タイトルとジャケットを陳腐にしたことで、一流の演奏が三流以下になってしまったアルバム。

1. I Get A Kick Out Of You
2. For All We Know
3. Two Degrees East, Three Degrees West
4. Greensleeves
5. You Go To My Head
6. East Of The Sun
7. Time After Time

Paul Desmond - alto saxophone
Jim Hall - guitar
Percy Heath - bass
Connie Kay - drums

Recorded on September 5, 6 & 7, 1959 in NYC.